最低賃金1,500円 半数の企業が「不可能」 収益改善(価格転嫁)と税制支援が不可欠
2024年「最低賃金1,500円に関するアンケート」調査
今年10月に全国の最低賃金が平均1,055円に引き上げられ、2カ月半が経過した。さらに、政府はこれまで2030年代半ばとしていた最低賃金1,500円(時給)の目標を、2020年代に前倒しした。 最低賃金の全国加重平均額1,055円から1,500円を達成するには42.1%の引き上げが必要となる。 5年後には対応を迫られるが、今回のアンケート調査で約5割(48.4%)の企業が最低賃金の引き上げは「不可能」と回答した。収益改善や生産性向上への投資、税制支援など、多面的な中小企業の支援も問われている。 働く人に賃上げは歓迎される。だが、最低賃金1,500円が「不可能」とする企業は48.4%(2,558社)とほぼ半数に達した。その一方で、「すでに時給1,500円以上を達成」している企業も15.1%(802社)あることがわかった。 2024年の「人件費高騰」倒産は1-11月累計93件(前年同期54件)に達し、年間最多の2023年の59件を大幅に上回っている。賃上げを実施した企業も、物価高に伴う収益悪化や業績成長の鈍化から「賃上げ疲れ」が漂い始めている。2025年の賃上げは、大企業と中小企業の規模による格差が生じかねず、最低賃金1,500円が事業継続と倒産・廃業の分岐点になるかもしれない。 アンケート調査で「(実現は)不可能」と回答した企業にどうすれば実現できるか尋ねると、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」が31.6%(748社)を占めた。 また、助成や税制優遇などの支援が拡充されない場合、「解雇規制の柔軟化」を求める回答も26.2%(621社)あった。最低賃金1,500円は、中小企業の事業再生と自立への支援強化がないと実現は難しく、賃上げは両刃の剣になりかねない。 ※本調査は2024年12月2~9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答5,277社を集計し、分析した。 ※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。