映画『燃えるドレスを紡いで』:地球にとってファッション産業は害か? デザイナー中里唯馬が考える衣服の未来
松本 卓也(ニッポンドットコム)
『燃えるドレスを紡いで』(関根光才監督)は、「パリコレ」の頂点、オートクチュール・ウィークで作品を発表する森英恵以来2人目の日本人デザイナー、中里唯馬に密着したドキュメンタリー。リサーチに訪れたアフリカでは、世界中から集まった衣服が巨大なごみの山と化す衝撃の現場に立ち、言葉を失う中里。しかしショックを乗り越え、その体験を新たなコレクションを創造する力へと変えていく。映画の公開を機に、当時の葛藤を本人にあらためて振り返ってもらいながら、服飾の未来について聞いた。
国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、石油産業に次いで2番目に地球環境を汚染しているのがファッション産業だ。繊維の生産は大量の水を消費し、CO2と工業用水を排出する。衣服を洗濯すれば、マイクロファイバーが海へと流れ込む。 不要になった衣服はごみとなり、大気や土壌を汚染する。売れ残りや使い古しの衣服が大量に先進国から輸出され、最終的にたどり着くのは南米やアフリカの貧しい地域だ。中でもケニアの首都ナイロビには、世界最大の中古服市場があり、その近くには衣料廃棄物の巨大な最終処分場がある。
衣服の終着点をめぐる旅
ここに注目したのがファッションデザイナーの中里唯馬だ。衣服を生み出すことを生業(なりわい)とする者として、製品の「終着点」を見ておく必要があると思ったという。 子どもの頃から自然と人間の調和、環境問題を意識していたと話す中里。職業として選んだファッション業界ではあったが、それが環境に与える負荷が大きい産業であることには、早くから気付いていた。 「自分の中で矛盾するものを感じてはいたんです。ただ、何となくモヤモヤがありながらも、どう向き合ったらいいのか分からないまま過ごしてきました」 09年に24歳で自身のブランド「YUIMA NAKAZATO」を立ち上げた中里は、16年からパリ・オートクチュール・ウィークでコレクションの発表を始める。奇しくも、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」が発効した年だ。そのあたりを境に世の中の気運が変わり始め、地球環境に対する意識がファッション業界全体でも高まっていった。 「そういう流れの中で、自分がこの問題にどう対峙すべきか、より鮮明になっていったところはあります。同世代の中にも、環境問題に取り組んだり、最新の技術で業界を変えようとしたり、新しい思想を持った人同士でつながりが生まれつつあった。そういう人たちと手を組んでいけば、何か現状が変えられるんじゃないかという期待が少しずつふくらんでいきました」 中里はリサイクルセンターなどに通い、服がどのように廃棄されているか、どういう素材やデザインだとリサイクルしにくいのかなどリサーチを重ね、そこで得た知見を自身の服作りに取り入れてきた。 やがて別のプロジェクトで知り合った映画監督・関根光才と地球上の衣服が最後にたどり着く地について話すうち、実際にそこを訪れ、映像に記録する計画を共に思い描くようになる。