彬子女王殿下が、ロンドン郊外の空港のチェックインで「さんざん待たされた」特別な理由とは?
「日本のプリンセスだから?」「Oh......」
こちらは「このまま飛行機に乗り込めなかったらどうしよう」とどきどきしていたのに呑気なものである。そして、隣で一部始終をみていた友人の一人は「ほんとうにああいうお辞儀をするんだね」となんだか楽しそうだった。 そのほかにも、このようなことがあった。たしかドイツからロンドン郊外の空港に戻ったときの入国審査場のことである。パスポートのスタンプを押すページの端が2センチほど破り取られていることを詰問された(偽造パスポートをつくろうとする人がページの一部を破り取ることがあるからだそうだ)。 「以前アメリカを出国する際、ホッチキスで留められていたビザを取るときに破れたのだと思います」と答えたが、まだ何やらぶつぶついっている。 眉間にしわを寄せたおばさんが次にした質問は、「ところで、なんであなた外交旅券もってるわけ?」である。返答に困ったが、「日本のプリンセスだから?」と正直に答えてみた。するとそのおばさん、3秒ぐらいの沈黙ののち「Oh......」とつぶやいた。 そしていつも入国のときにされるような、「どこの学校に行っているんだ」とか、「何を勉強しているのか」という質問はなく、「無知でごめんなさいね」といいながら、おずおずとスタンプを押してくれた。 英語で名前が書いてあるのだから、わかってくれてもよさそうなものである。でもよくよく考えてみると、日本からの往復のときなどは大使館の方たちが対応してくださるが、留学中のプライベートな旅行は私一人で移動する。 スーツ姿の大使館の方たちを引き連れて、上品な帽子でもかぶっていたら別なのだろうが、スーツケースを自分で運び、ジーンズにセーター姿で目の前に立っている女の子が、まさか本物のプリンセスだとは思えなかったのだろう。
大都会フランクフルトの空港に着くはずが......
ヨーロッパを移動するときは時間や費用の問題から、ときに格安で有名な航空会社を使うこともあった。ドイツのハイデルベルグで研究会があり、英国から出かけたときのこと。行き先はフランクフルト空港で、調べるととても安いチケットがあったので、これは良いと予約をした。 出発当日、眠い目をこすりながら、朝5時くらいにオックスフォードを出発して飛行機に乗った。空港を飛び立って2時間ほどすると、目的地が近づいたとのことで飛行機が高度を下げはじめる。 でも、大都会フランクフルトの空港に着くはずなのに、眼下にみえる景色はただの野原。建物らしきものが何もない。もしかして間違ったチケットを買ってしまったのかと、とてつもない不安感に襲われて一気に目が覚めた。 しかし、残念ながら私の不安が裏切られることはなく、その機体は私の知っているフランクフルト国際空港ではなく、野原の真ん中にぽつんとある空港に意気揚々と着陸してしまったのである。 入国審査を終えて外に出てみても、その小さな空港にあったのはホットドッグを売っているスタンドとレンタカー屋さんだけ。「ここはほんとうにフランクフルトなのだろうか」「もしかしてドイツにはもう一つフランクフルトという町があったのかも......」と、考えはどんどん悪いほうへ。 悩んでいても仕方がないので、一念発起してインフォメーションで「ここはほんとうにフランクフルト空港ですか?」と聞いてみた。すると、ここはたしかにフランクフルトだが、フランクフルト国際空港ではなく、フランクフルト・ハーン空港で、陸軍の基地が民間に払い下げられてできた空港であると教えられた。 とりあえず最悪の事態は避けられた。そして数時間に1本しかないバスを待つのに2時間ほどかかったので、予定時間より到着は遅れたけれど、目的地のハイデルベルグ大学にその日のうちにたどり着くことはできた。 到着後にドイツ人の友人に「フランクフルト・ハーン空港に行っちゃった」と話したら、「えっ、ハーン? あそこをフランクフルトと呼んだらだめだよね」といわれてしまったのだった。 そういうわけで、自分の予約した格安航空券は危ないと気づいた私。帰りはいくつかの町の日本美術コレクションを調査してハンブルグから帰る予定にしていた。そこで、フランクフルトと同じ轍を踏んではいけないと、ハンブルグにはいくつ空港があるかと友人に聞いてみた。 すると「ハンブルグに空港は一つだけで、市内から車で20分もあれば着きますよ」とのこと。そんなに近いのだったらと、長旅で荷物も大きいので帰国の日はタクシーを使うことにした。