市川團子「昨年亡くなった祖父・猿翁の言葉は僕の宝物、「天翔ける心」を胸に全力で。父・中車と同じ舞台でも、日常の関係は持ち込まない」
歌舞伎界に新風を巻き起こした祖父と、ドラマや映画の世界で長年活躍する父を持つ20歳の歌舞伎役者、市川團子さん。澤瀉屋(おもだかや)を牽引する《期待の新星》として、今、大きな注目を集めている。2024年は澤瀉屋にとって重要な「スーパー歌舞伎」の原点である作品に主演し、話題を呼んでいる。(構成:篠藤ゆり 撮影:岡本隆史) 【写真】ヤマトタケルを演じる市川團子さん * * * * * * * ◆疾走感の中で日々が過ぎていく それにしても、今まで経験したことのない台詞量です。3幕の間、ほぼずっと出させていただいていて、幕が開いたら最後まで走り続けている感じです。 今でも、ヤマトタケル役を演じさせていただいているという実感が湧かないくらい、ものすごい疾走感のなかで日々が過ぎていきます。 2月の公演ではダブルキャストの中村隼人さんに本当に助けていただきました。「ここ、こうなんじゃない?」とさまざまにアドバイスしていただいたり、とにかくたくさん話しかけてくださって、メンタル面も心から気にかけてくださいました。 そしてこれはあってはいけないことですが、2月に私が体調不良で休演させていただいた時に、私の分まですべてお舞台をつとめてくださいました。とてもありがたく、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。隼人さんの出演は2月25日まででしたので、その日はとても寂しかったです。 帝役は父がつとめています。どの作品でもそうですが、日常の関係は舞台には持ち込まないようにしているので、父と同じ舞台に立つからといって、ヤマトタケルの役作りとは結びつけてはいません。
◆尊敬する祖父を目指して 毎日舞台に立ち続けるためには、心身のコンディションを整えることが大切です。僕の場合は、たっぷり寝るのが最大のメンテナンスですね。 リラックスできる音楽を聴いて心を緩める時間も、大切にしています。 よく聴いているのは、K-POP。BTSやSEVENTEENをはじめ、ガールズグループのIVE、LE SSERAFIM、New Jeans などもよく聴きます。最近はあまりロック調の曲ではなく、どちらかというと穏やかな曲が好みです。 今は大学生でもあるので、学業もおろそかにはできません。祖父は、曽祖父や高祖父の「外からの視点を持つことも大事だ」という方針で、大学で学びました。 ですから僕も、文学部比較芸術学科で映像や演劇について学んでいます。
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