ゼレンスキー氏、日本メディアに語り尽くした1時間 千日超えたウクライナ侵攻、その行方は(前編)
「長期戦はプーチン以外の誰の利益にもならない。プーチンはウクライナの迅速な制圧に失敗し、長期戦になった。彼は死ぬまでクレムリンに居座るだろう。唯一恐れるのは自国民だ。彼は戦争継続のため何でもするだろう。さもなければ国民の信頼を失い正統性が問われる。(ただ、全体として考えると)われわれは戦争の困難な時期にいる」 ゼレンスキー氏の言う「最も厳しい時期」は2022年2月に始まった侵攻の最初期だ。ロシア軍はキーウ郊外まで迫り、米欧の外交官や専門家の間ではゼレンスキー氏らが国外に脱出して早期に首都が陥落するとの見方もあった。しかし、ゼレンスキー氏はSNSで徹底抗戦を表明。キーウを守り切り、2022年秋には東部ハリコフ州や南部ヘルソン州で領土を奪還した。ただ、2023年6月にウクライナ軍が始めた大規模な反転攻勢は失速し、奪還地域を広げられないまま終息した。その後、ロシア軍は東部を中心に攻勢を強めている。ゼレンスキー氏も軍の苦境を認めた。 ▽ウクライナが勝つための課題
―ゼレンスキー氏は各国の支援に感謝しつつ、ロシアを倒すには不十分だと訴えた。 「パートナーがわれわれを支援した。米国、欧州、日本に感謝している。たださまざまな支援は十分ではない。これはパートナーだけの課題ではなく、われわれの産業の課題だ。国産兵器増産のため多くの投資をしている。パートナーを非難しないが、団結の意思だけでロシア軍は倒せない。われわれは領土ではなく、人命保護を最優先に考えている。それでもプーチンに領土は譲らない。将来、ウクライナは領土の一体性を取り戻すだろう。 目下の課題は東部(ドネツク州など)での敵の進軍だ。われわれには十分に訓練された旅団が不足しており、解決に取り組んでいる。パートナー国と話し合い、14旅団のうち2旅団余りには武器や訓練が与えられた。だが少なくとも10旅団、本来は14旅団の準備を望んでいた。備えが不十分なためロシアが東部で進軍した。ロシア軍は東部の別方面、ハリコフ州にも送られたが、転戦した部隊によるハリコフ市奪取計画を打破した。北東部スムイ州でスムイ市を奪取する攻撃も、わが軍が察知し、対抗した。予防措置としての(ロシア西部)クルスク攻撃も成功し、敵の計画を破壊した。ただ状況は依然不安定で、安定化には部隊強化が必要だ」 ▽つかめぬ犠牲者数