いすゞエルフミオ公道試乗レポート!! AT限定普免で運転できるディーゼルトラックの実力を探る
回しやすいハンドル・まろやかな乗り心地・6速ATの良さ
トラックといえば大きなハンドル(ステアリングホイール)のイメージだが、エルフミオは直径382mmで、サイズ的にはここ10年ほどの乗用車やミニバンと近い。適切なドラポジであれば、コンパクトな動作で回すことができる。回しはじめの瞬間に反力を感じるが、基本的には軽く素直な切れ味である。また直進性が良く、微舵補正に煩わされることが少ない点も長所だ。 乗り心地は「やや硬めにしてまろやか」。最大でも総重量が3.5トンというトラックなので、乗員・エンジン直下の前輪に荷重が偏る傾向があり、フロントサスペンションはある程度の硬さにチューニングされている。 特に空荷だと硬さを感じる(ただし路面の突き上げなどはシートが効果的に緩和してくれる)が、試乗時は前述のとおり500kgを積載し、前後輪へ適度に荷重が掛かってバランスが改善されるため、むしろ乗り心地は良くなってくる。この時に感じる「クルマの乗り味」がまろやかというわけである。 ブレーキの仕様はバリエーションによって異なるが、フルフラットロー後輪ダブルタイヤ車は4輪ともディスクブレーキである。ブレーキペダルのストローク感がなかなか絶妙で、慣れると制動力を穏やかに加減しやすく、冷静な安全運転を心がければ荷崩れや荷傷みを防げると思う。 走りで印象的だったのが、6速オートマチックの出来の良さだ。アイシン製のオーソドックスなトルクコンバータ付ステップATで、シフトショックが少なく快適、しかもロックアップ領域が広いのでダイレクトな運転フィーリングが得られる。シフトアップやアクセルを緩めた際の減速チェンジのタイミングは、運転者と息を合わせたかのような見事な制御っぷりで、感銘さえ覚えるものだった。
誰でも運転できる「本格派の」小型トラック
Dレンジからシフトセレクターをドライバー側へ寄せればマニュアルゲートへ入り、ギア位置を固定して走りたい時や、緩制動で減速チェンジを使いたい時に便利である。小排気量エンジンゆえに、2トン積エルフのような補助ブレーキ(排気ブレーキ)は付かないが、その代用として減速チェンジは有効で、しかも使い勝手がよかった。 (ちなみにこれを操作しているとき、いすゞ唯一の自社開発ワンボックスカー「ファーゴ(初代)」のディーゼル4速A/T車が、コラムレバーでオーバードライブ(4速)のON/OFFを操作でき、排気ブレーキ感覚で便えたことをふと思い出した。) さて、都内で乗り回したエルフミオからは『よりポピュラーに仕立てられたエルフ』という印象を受けた。そもそも2トン積エルフは、先代の時点でも乗りやすい小型トラックで、決して敷居の高いクルマではなかったが、エルフミオはさらにガソリンATまたはCVTの乗用車しか知らない人でも、あまり違和感なく運転できるであろうドライバビリティに仕上げられている。 そして、このクルマはやはり「いすゞエルフ」の紛うことなき一族である。実はキャビンだけでなく、ラダーフレームシャシーも2トン積エルフ(NJR系)と共用で、それに車両総重量3.5トン未満という車格に最適なパワートレーンを組み合わせたのであって、決して軽薄なつくりではないことは、積載状態でのしっかりした走りからうかがえるところだ。AT限定普免ドライバーにとって扱いやすい仕立てでも『本格派の小型トラック』の本質はそのまま、というのがエルフミオの真価である。