米政府債務は持続不可能-100万通りのシミュレーションで結論は一つ
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今年、政治家が「持続不可能」な借入金の道筋に対処する時期が来た、あるいは既に過ぎていると警鐘を鳴らした。ルービン元財務長官は1月、米国は財政赤字に関して「ひどい状況」にあると述べた。
金融の分野では、ヘッジファンド運用会社シタデルの創設者ケン・グリフィン氏が1日、米国の政府債務について「見過ごせないほど懸念が高まっている」との考えを投資家の宛て書簡で示した。
その数日前、ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、米国の公的債務状況は「かつて経験したことがないほど切迫している」と述べた。
元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのケネス・ロゴフ氏は、債務の正確な「上限」は分からないが、債務水準が上がり続けるにつれて問題が出てくるだろうと話す。ロゴフ氏が言いたいのは、予測は不確実だということだ。
この不確実性に一定のパラメーターを与えるため、BEはCBOの基本的見解に対して100万通りものシミュレーションを行った。各シミュレーションは、GDP成長率とインフレ率、財政赤字、金利の組み合わせを変え、過去のデータに見られるパターンに基づいて変化させ、債務残高の対GDP比を予測した。
最悪の5%のシナリオでは、34年の債務残高の対GDP比は139%以上になり、これは危機的状況にあった昨年のイタリアよりも高くなることを意味する。
イエレン氏には債務の持続可能性に関する別の指標がある。同氏はインフレ調整後の利払い費がGDPの2%未満が望ましいとしている。
この基準で計算すると、今後10年間の平均で基準値に抵触するのは30%のシナリオだった。イエレン氏自身も2月8日の公聴会で、「極端な場合」政府が発行しようとする国債を市場が消化しないほどの水準に借入金が達する可能性があることを認めた。今はその兆候はないと付け加えた。
党派政治
持続可能な道を歩むには、議会の行動が必要だ。しかし過去を振り返ると、期待はできない。昨年夏、政府支出を巡る意見の対立が頂点に達し、米国をデフォルト(債務不履行)寸前まで追い込んだ。大混乱を食い止めるための合意で、債務上限は25年1月1日まで保留され、借り入れに関する新たな衝突は大統領選挙後まで先送りされた。