米政府債務は持続不可能-100万通りのシミュレーションで結論は一つ
昨年の夏は、危機がどのように始まるかを小規模ながら予見できた。フィッチ・レーティングスの米国格下げと長期米国債の発行増によって、23年8月の2日間にわたり投資家の関心がリスクに集中した。指標となる10年物国債利回りは1ポイント上昇し、同年10月に5%に達した。
事態がどのような結末を迎えるか知りたいのであれば、22年秋の英国を見ればいい。トラス首相(当時)が打ち出した財源の裏付けのない減税案によって英国債は暴落。
利回りはあっという間に急騰し、イングランド銀行(中央銀行)が金融危機のリスクを回避するために介入せざるを得なくなった。債券自警団の行動により、政府は計画を中止せざるを得なくなり、トラス首相は退陣した。
米国については、ドルが国際金融の中心的役割を果たす基軸通貨であるため、同じようなメルトダウンの可能性は低い。究極の安全資産としての米国債に対する投資家の信頼を揺るがすには、相当なことが必要だろう。
しかし、仮に米国債の信認が失墜した場合、米国は安価な資金調達手段を失うだけでなく、世界的なパワーと威信を失うことになり、ドルの転落は重要な転換点となるだろう。
変数
米政府の公的な予算監視機関であるCBOは、どのようにして債務予測を出しているのだろうか。
CBOはGDP成長率が2%前後となり、インフレ率が2%に戻り、金利が現在の水準から低下する、などの変数を想定している。しかし、CBOの予測を支える主要な仮定は楽観的に見える。
BEは、将来の金利の市場価格と債券の満期プロフィルデータを使って予測モデルを構築した。CBOの他の全ての前提をそのままにすると、34年の債務残高がGDPの123%に相当することが示された。
このレベルの負債は、国債費がGDPの5.4%近くに達することを意味し、23年の連邦政府の国防費の1.5倍以上、社会保障予算全体に匹敵する。
長期的な見通しが不安なものであることには、政治的な派閥を超えて各界の指導者らが同意している。