年始こそ「一人旅」をすべき根本理由
ひとり旅の偶然性
ひとり旅には、予定外の出来事や出会いがつきものである。例えば、 ・列車の遅延 ・天候の急変 ・予期せぬ風景との遭遇 こうした偶然の出来事は、最初は戸惑いを生むかもしれないが、最終的には旅の思い出を豊かにする要素となる。 他者と旅をすると、こうした偶然の出来事に対して、どちらかが責任を負う形になりやすい。しかしひとり旅では、全ての出来事を自分自身の経験として受け入れることができる。たとえそれが不便や困難であったとしても、それを通じて自分の考え方や行動が変わることがある。こうした 「予期せぬ学び」 こそ、ひとり旅の醍醐味のひとつである。
年始に旅をすることの社会的意義
ここで、ひとつの疑問が浮かぶ。なぜ「年始」に旅をする必要があるのか。旅そのものは、いつでもできるのではないか、という疑問である。確かにそのとおりだ。しかし、年始には特有の時間的な価値がある。 年始は、多くの人が同じように新しいスタートを切ろうとする時期だ。そのため、旅先でも同じように何かを求めている人々に出会う可能性が高い。また、年始の静けさは、観光地や自然のなかで普段とは異なる雰囲気を醸し出すことがある。これらの要素は、旅に特別な意味を与える。 さらに、年始にひとり旅をすることは、日常生活における人間関係のバランスを見直す契機にもなる。普段、家族や職場のなかで果たしている役割を一旦離れ、自分自身をゼロベースで捉えることができる。この体験は、新しい年に向けて心の整理をする助けとなるだろう。 もちろん、ひとり旅が全ての人に適しているわけではない。旅に出ること自体がストレスになる人もいれば、自宅で静かに過ごすことを好む人もいるだろう。また、旅に出るための時間や経済的な余裕がない場合もある。 重要なのは、年始という時間を自分にとって意味のある形で使うことである。ひとり旅はそのひとつの選択肢であり、それが必ずしも最善の方法とは限らない。しかし、旅に出ることで得られる解放感や自己発見の機会は、他の方法では得られないものでもある。
孤独の中で見つける自由
年始のひとり旅は、単なる移動や観光ではない。それは、自己との対話を深める行為であり、新しい年を迎えるための心の準備でもある。ひとりで旅をするという行為は、 「孤独」 のなかに自由を見出し、偶然のなかに学びを見出す試みだ。 旅に出るかどうかは、最終的には個々の選択に委ねられるべきである。ただ、もし旅を選ぶのであれば、その体験が新しい年に向けて何かしらの糧となることは間違いないだろう。 そしてその旅が、どのような形で自分のなかに残るのか。それは、実際に旅をしてみなければ分からないことである。
伊綾英生(ライター)