飲食店豊富な東京だが…青森、新潟に続く勢いで「家飲み」が増加。総務省公表「家計調査」結果を、ミクロ的視点からエコノミスト宅森昭吉氏が解説
“景気の予告信号灯となる身近なデータ”として、今回は総務省の「家計調査」を取り上げます。本調査は、総務省が公表している「家計調査」は、マクロ的経済指標の視点からみるとGDPの個人消費を算出する際の需要側の基礎統計です。しかし、ミクロ的視点からみると興味深いデータの宝庫なのです。エコノミスト・宅森昭吉氏による解説をみていきましょう。
総務省公表の「家計調査」は興味深いデータの宝庫
家計調査では年に一度、2~3月頃に、2人以上世帯のデータをもとに作成した、直近3年間の平均でみる「品目別都道府県庁市及び政令指定都市ランキング」が発表されます。統計的に有効なサンプル数を確保する意味で直近3年間の平均が使われているようです。政令指定都市では、川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市の5市が対象になっています。 また、毎年8月頃に『家計簿からみたファミリーライフ』が発表されます。今年は8月26日に発表され、今回も「食生活から垣間見られる土地柄」の項目に、2021~2023年平均の品目別「年間支出金額」または「年間購入数量」が、全国で上位である主な品目(食料)について、それぞれの地域の特徴を踏まえ、まとめた表が掲載されました。
消費金額・消費量に見られる…地域によって異なる飲食物の好み
地域ごとに購入量の多い飲食物をみてみると、 札幌市:さけ 青森市:ホタテ 仙台市:かまぼこ 山形市:中華そば(外食も) 横浜市:しゅうまい 富山市:ぶり 甲府市:ぶどう 岐阜市:柿 神戸市:紅茶 和歌山市:梅干し 鳥取市:梨 広島市:かき(貝) 高知市:かつお 長崎市:カステラ 宮崎市:ぎょうざ(3年平均の1位、ほかに静岡県浜松市、栃木県宇都宮市のベスト3が記載されている) 那覇市:かつお節・削り節 など、上記内容をみると、飲食物の好みが地域によって違うことがわかります。また、消費金額・消費量にも、お国柄が垣間見られます。 10年前みその購入1位だった長野市、現在の品目は小麦粉、えのきだけに… 10年前の表と比べてみると、同じものが記載されていることが多いですが、変化したものもあります。 たとえば、みその購入が1位だった長野市から、みそが消えました。塩分控えめということで健康に気をつかう家庭が増えたためか、購入金額、購入数量とも第8位にランクダウンしたため、表から項目が消えたのです。 酒類全体の購入額、いわゆる「家飲み」が多い上位は順に青森市、新潟市…東京!? 酒類全体の購入金額、いわゆる「家飲み」が多い上位2市は、順に青森市、新潟市です。これに、3位盛岡市、4位山形市、6位秋田市と雪国、米どころの印象が強い地域が続きます。 ここで5位と上位に割って入ったのがコロナ前は10位台だった東京都区部です。コロナ禍を経て、「家飲み」が増えたのかもしれません。 飲まれるお酒の種類は、地域によって特徴があります。やはり、地元で生産されているお酒の種類がよく購入されています。 秋田市、新潟市と米どころは「清酒」。南九州の鹿児島市、宮崎市は「焼酎」です。「ビール」は青森市、盛岡市の順に購入金額が多く、「ウイスキー」は札幌市、仙台市の順、「ワイン」は東京都区部、横浜市で多く飲まれています。 まるで西郷隆盛…お酒が強そうなイメージの割に下位の鹿児島市 「焼酎」で第1位の鹿児島市は、酒を多く飲みそうなイメージですが、酒類全体の購入金額では52市中39位と低めの順位になります。「清酒」は最下位の那覇市を上回るものの金額・数量ともブービー賞の51位、「ビール」は金額33位・数量40位、「ウイスキー」は金額・数量とも最下位、「ワイン」は金額33位・数量46位、「チューハイ・カクテル」は金額48位・数量49位です。 6年前に放送されたNHK大河ドラマの『西郷どん』でも、主役の西郷吉之助(隆盛)が見かけによらず酒を飲めないというシーンが出てきました。鹿児島市はそうしたイメージです。 外食の中の「飲酒代」が東京都区部に次いで多いのは、高知市で2万488円、全国平均の2倍です。前年の2020年~2022年の3年間の平均では1万4,211円で東京都区部に次ぎ、やはり2位。全国平均の2倍弱でした。 しかし、かつては4万円台で1位の年もあったように、高知市の飲酒代はもっと多かったのですが、コロナ禍の影響が残る2021年~2023年の3年間平均のデータでは低めになってしまいました。 酒の消費と喫茶代のランキング・グラフからわかる、東海地方のお国柄 酒類(家飲み)と飲酒代(外食)の合計で酒の消費の52市のランキングを作ってみました。これによると岐阜市49位、津市47位、名古屋市43位と東海3県の県庁所在市は下位にあたります。 一方、喫茶代のランキングのグラフをみると、岐阜市1位、名古屋市2位で、モーニングの文化がある県庁所在市が上位にきました。この両市の人は相対的にお酒よりもコーヒーを飲むことが多いと思われます。 ※なお、本記事は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。 宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト) 三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
宅森 昭吉
【関連記事】
- 株の売り時…出現したら「とにかく逃げるべき」ローソク足の形
- 南海トラフ巨大地震がきたら…災害発生時に起こり得る「株価の変動」へ、いまからできるリスク対策【ストラテジストが解説】
- 東京証券取引所・プライム市場の株価騰落率「トップ3」と「ワースト3」…値上がり率2位は〈ポケモン〉や〈ONE PIECE〉のカードゲームが好調な銘柄【昨日の株価】
- 「円高になったら、日本株は売りですよね?」“円安の反動”に警戒強まるも…いま本当に恐れるべき「円高よりヤバい大惨事」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
- 「大谷翔平選手がホームランを打つと、日経平均株価が上昇する」というスゴい現象【エコノミスト・宅森昭吉氏】