「ご当地グルメ」最高! 地元の味で地域を再生する「ガストロノミーツーリズム」をご存じか
成功例とポテンシャル例
NHKでは、ガストロノミーツーリズムの成功例として、人口6000人ほどの小さな町である千葉県・神崎町の例を紹介している(2024年2月16日、NHK首都圏ナビ)。 ヒットしているのは「麹」。神崎町は、江戸時代から、発酵食品の生産が盛んで、 「関東の灘」 といわれていたほどの土地だ。 10年ほど前に「酒蔵まつり」を開催したところ、1日2万人を超える観光客が訪れた。いま酒蔵による発酵文化の体験ツアーには、国内外から参加者が集まる。道の駅で行われる料理などの体験講座は、毎回満員なのだという。 地元の飲食店では、地元特産のピーナツみそといった、ありそうでなさそうな調味料を使ったメニューが人気を集めている。 ガストロノミーツーリズムは、東京から遠く離れた土地に人を呼ぶイメージが強いかもしれないが、このように、首都圏でもインバウンドが素通りしてしまうような土地にも使える。 少子高齢化が進む神奈川県三浦市は、三崎のマグロや三浦大根で知られるが、半島にあるのでアクセスするには少々遠い印象がある。 三浦市では、海の幸などを使いつつ、相模湾越しに見える富士山もウリにして、世界から観光客が集まるスーパーリゾートへ再生しようと計画している。富裕層をターゲットにして、高単価を狙う作戦だ。
ポテンシャル例
同じく神奈川県の小田原市について考えてみたい。小田原城や忍者といったコンテンツはあるが、箱根や伊豆へ向かうために素通りされてしまいがちな土地である。漁港があり、小田原かまぼこが名物で、近年は小田原おでんに力を入れている。カニカマはヨーロッパでも人気であるし、バスクでも魚のすりみが売られているのを見た。練り製品はもっと外国人にアピールできるはずだ。 人気スポットの「鈴廣かまぼこ博物館」では、かまぼことちくわ両方を手づくり体験することができるのだが、現在、ガイドツアーについてもすべて日本語のみとなっている。ガストロノミーツーリズムは、 「英語等の受け入れ体制」 が求められる。内陸に向かうと伊勢原市がある。丹沢・大山では、シカやイノシシの肉をジビエ料理として提供している。同市においては、シカやイノシシに田畑が荒らされ、その被害額は1000万円ほどに上るという。 例えばイノシシは、イタリア・フィレンツェの名物である。臭みを酢や白ワイン、香味野菜やハーブ、スパイスで3日間マリネし、チョコレート煮にするメニューを現地の料理教室で習ったことがある。 現地の人から見たら、食べたことのあるイノシシ肉が、違う方法で臭みを抜かれている、ぼたん鍋など違った料理法や味付けにされている。そんなことを味わうのも、立派なガストロノミーツーリズムだろう。 インバウンドがやってきて、イノシシ肉の消費が増えれば、田畑の被害が減り、交通やその他地元にもお金が落ちることになり、最高ではないか。
鳴海汐(国際比較ライター)