相続税のないシンガポールへ移住したい…相続人・被相続人の海外移住5年→10年で計画が頓挫した富裕層たち
非居住制限納税義務者がいる場合の相続税
以下のような設例を考えてみました。 (1)被相続人(外国に10年以上居住)、(2)相続人(子のA、日本居住)、相続人(子のB、外国籍で日本に住所なし)、(3)相続財産(国内財産1億円、国外財産1億円)(4)相続財産の分配:AとBで均等に相続 被相続人は、外国に10年以上居住なので、国内に住所なし、かつ10年以内に日本に住所なしということで、非居住被相続人ということになります。 相続人のAは、日本に住所ありということで居住無制限納税義務者となり、国内財産および国外財産を共に課税となります。 相続人Bは、国内に住所なしで、かつ、日本国籍なしということで非居住制限納税義務者となり、国内財産のみが課税となります。 AとBは、それぞれ国内財産の5,000万円と国外財産の5,000万円を相続します。 Aは居住無制限納税義務者ですので、国内財産の5,000万円と国外財産の5,000万円が課税対象になります。Bは非居住制限納税義務者ですので、国内財産5,000万円のみが課税対象になります。 結果として、課税財産はAの相続分1億円とBの相続分5,000万円の合計の1億5,000万円です。ここから基礎控除額3,000万円+600万円×2=4,200万円を控除します。 次に、法定相続人の取得金額を計算します(1億800万円÷2=5,400万円)。ここで算出税額を計算して、算出税額を合計して相続税額が計算されます。 結論としましては、海外移住という手法による租税回避は、相当に難しい状況になるといえるでしょう。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好