空気が読めない、いつも会議に遅刻する…職場の「グレーゾーン部下」に上司が絶対に言ってはいけない一言
学生時代はうまくやっていたのに、就職してから職場環境になじめない――。ストレスマネジメント専門家の舟木彩乃さんは、「近年、社会に出て初めて、グレーゾーンを含む発達障害が自分にあることが分かったという人が増えています」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は舟木彩乃『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)の一部を再編集したものです。 ■「自分はグレーゾーンでは」と社会に出てから気がつく 近年、社会に出てから初めて発達障害を疑い、精神科や心療内科を受診する人が増えています。企業でカウンセリングをしていても、「自分は発達障害かもしれない」という悩みを抱えて相談にくる人が少なくありません。メディアなどで頻繁に発達障害が取り上げられることも影響しているでしょうが、社会構造が複雑になり、適応できない場面が増えてきたことも一因ではないかと思われます。 筆者のところに発達障害を疑ってカウンセリングにくる人は、比較的若い世代が多いように感じます。学生時代は環境に適応できていたけれど、社会に出てから適応が難しくなり、ネットなどで調べると発達障害の特性が自分に当てはまるので心配になったという人が多いです。 発達障害は脳機能の発達に関する障害で先天的なものとされています。それまで気づいていなかっただけで、社会人になって初めて発達障害を発症することはありません。専門医が見ても診断名がつかない、いわゆる「グレーゾーン」のケースではなおさら、社会に出てから発覚することが多いといえます。
■事例1:学生時代は「できる人」キャラだったのに…… Bさん(男性20代)は、電子工学系の一流大学院を出て、主にシステム開発の仕事を担当しています。システム開発は、頭を使って黙々と作業することが得意なBさんに合っていましたが、慣れていくにつれて担当するパートが多くなり、会議でのプレゼンや発言の機会も増えていきました。 しかし、それはBさんにとって、歓迎すべき事態とはいえませんでした。なぜなら、Bさんは周囲の空気を読むことが苦手で、社の内外を問わず知らないうちに相手を苛立たせてしまうからです。 Bさんは、会議で、自分が開発した案件のこだわりのある箇所についてだけ長々と説明したことがありました。当然、周囲は白けた反応でしたが、会議が終わってからも、忙しそうにしているメンバーに何度も同じ箇所を説明に行ったりしました。顧客へのアフターフォローでも、簡単な質問に対しマニアックな長文メールで回答して、クレームがきたことがありました。 次第に周囲から厳しく指摘されることが増え、Bさんは、コミュニケーションが上手くいかないと悩み出しました。 Bさんの“こだわり”や“空気が読めない”というのは、社会人になって始まったことではありません。学生の頃も、クラスで“浮いている”と感じたことはあるそうですが、成績優秀だったので特に問題にはなりませんでした。しかも、大学院では彼の“こだわり”によって緻密な論文を完成させることができ、学会で賞を獲ることもできました。担当教授から褒められることも多く、研究室では「できる人」というキャラで通っていたということです。 しかし、最近では、同僚から「そこは全然重要じゃない」などと相手にされなかったり、一生懸命回答した取引先からクレームがきたりして、自信を失うことばかりで、会社に行くのがつらいと思うようになってきたそうです。