時代を生き抜いたニッポンのスポーツカー「フェアレディZ」
久しぶりにスポーツカーの話をしたいと思う。そう思ったきっかけは日産から7月21日に出た『「フェアレディZ」を一部仕様向上』というタイトルのリリースだ。 内容はそう大したことはない。一部グレードにオプションで設定されているBOSEサウンドシステムに、アクティブ・サウンド・コントロールとアクティブ・ノイズ・コントロールが追加されたという細かな仕様変更だ。オーディオシステムを使ってエンジンサウンドを演出したり、不快な音を低減したりするのだという。最安値で383万円。最高値だと573万円のスポーツカーにはあっていい装備だろう。
日産はZをどうするつもりなのか?
筆者の目に留まったのはそのリリースの一文だ。『フェアレディZは、世界トップレベルの走行性能や、走りのために鍛え上げられたしなやかでダイナミックなデザインなどにより、あらゆるシーンで走る愉しさを満喫できる真のスポーツカーとして、お客さまから高い評価を得ています。また、フェアレディZ NISMOのラインアップ追加などにより、新しい魅力を提案し続けています』。 ここ数年、国内マーケットに注力してこなかった日産が、フェアレディZをどうしていくつもりなのかずっと気になっていた。例え仕様変更が些細であったとしてもフェアレディZの新しい魅力を提案し続けていくという言葉をそこに見つけて嬉しい気持ちになった。 日本を代表するスポーツカーとして、日産フェアレディZとマツダ・ロードスターは双璧だと言っていいだろう。ブランドイメージを代表する一台としてずっとカタログに載り続けていることはとても重要なことだ。 もちろんこの2台は性格が違う。それはちょうど、かつての英国のスポーツカーにおけるトライアンフとMGの立ち位置に似ている。トライアンフは豪快さを求めるバンカラなスポーツカーとして長らく人気があった。フェアレディZはこの系譜を継ぐスポーツカーだと思う。 一方で、MGは非力なエンジンを使い切り、ひらりひらりと身をかわす零戦のようなスポーツカーだ。マツダ・ロードスターはこちらの系譜に属するように思う。 どちらも異なる魅力を持つ古典的なスポーツカーで、ホンダが新型NSXで狙う電子デバイスの可能性を追求した未来的なスポーツカーとは方向が違う。新技術を否定するばかりでは進歩はないが、長く愛されてきたものには長く愛されてきたなりの魅力がある。定番商品とはそういうものだ。