箱根駅伝 駒澤大・佐藤圭汰、復活の区間新の舞台裏「9月の時点では絶望しかなかった」
【4月と9月、同じところを二度もケガ】 第101回箱根駅伝、復路7区のスタート前――。 駒澤大の佐藤圭汰(3年)は、同じ区間を走る中央大の岡田開成(1年)と親しげに短く言葉を交わしていた。ともに洛南高校出身で佐藤が2学年上の先輩。お互いの健闘を誓い合ったのだろう。 佐藤は、18秒先にタスキをもらった岡田に5km手前で追いつくと、徐々にその差を広げていった。前を行く青山学院大を懸命に追い、中継所で4分7秒あった差を、12km手前にある二宮の計測ポイントでは3分16秒まで詰めた。運営管理車にいた藤田敦史監督は7区起用がハマったと感じたという。 「最初、(3区を走った)谷中(晴、1年)の調子がそれほど良くないのもあり、圭汰を3区、7区のどちらで起用するのか迷ったんです。その際、どちらの区間のほうがアドバンテージを得られるのかを考えました。3区は圭汰でもそれほど差がつかないが、7区なら差がつきますし、復路でもう1回チャンスを作れることになる。谷中も復調したので、戦略的に圭汰を7区に置いたんです」 佐藤はその後もペースをほぼ落とさずに快走。トップの青学大との差を1分40秒にまで縮める走りを見せた。藤田監督は「ここで追い上げムードができた」と佐藤の走りを絶賛した。 「圭汰は本来、7区を走るような選手ではなく、2区、3区を走る選手。そういう選手が7区に入れば、区間記録を1分近く更新するくらいの走りをしてもおかしくはないです。ただ、それをわかっていてもできないのがこの競技なんですが、いとも簡単にやってのけるあいつはやっぱりすごいですよ」 6区を走り、佐藤にタスキをつないだ伊藤蒼唯(3年)は、「(佐藤本来の走りは)まだこんなもんじゃないですよ」と笑った。 「僕が6区で青学に負けてしまったなか、圭汰が勢いをつけてくれて、しかも区間新記録じゃないですか。ずっと故障していて、2カ月でここまでもってくるのが、圭汰のすごさを表していると思いますし、チームメイトとして心強いですね」 佐藤は昨年4月に恥骨の疲労骨折が判明し、戦列を離れた。歩きでも痛みが出ることがあり、走ることはほぼ不可能だった。筋力を落とさないための補強を行ないつつ、治療に努め、6月には回復した。だが、練習を始め、いい状態に戻りつつあった9月に同じ箇所を痛めてしまった。 「その時はもう絶望しなかったです。競技に復帰できるのかどうかわからない状態になってしまいましたし、もう走れなくなってしまうんじゃないかという怖さもありました」