有権者は投票で少しでも「まし」な人を選ぶべき「時間はかかるがダメな議員は淘汰される」 茨城大・村上信夫特任教授
27日投開票の衆院選について、茨城大人文社会科学部の村上信夫特任教授(66)は産経新聞のインタビューに応じ、「有権者はまず投票に行くことが大切。候補者の主張に耳を傾け、少しでも『まし』と思われる人を選ぶことが、民主主義の基本ではないか」と説いた。 【表でみる】夕刊フジが作成した「落選危機にある大物・著名候補21人のリスト」 今回の選挙でまず焦点となりそうなのは、石破茂首相が衆院解散直前に行った(派閥パーティー収入不記載事件に関係した)「裏金議員」への処置や対応を国民がどう判断するかだろう。 選挙結果などを予想する党のマーケティング(市場調査)の結果が思わしくなく、危機感を覚えてかじを切ったと思われるが、今のところ国民の支持を得ている印象はない。 むしろ、選挙の争点となるべきなのは、危うい日中関係やウクライナなどの外交問題と、少子高齢化の進む国の将来をどうするかといったテーマではないか。先の党首討論でも本当はそうした政策論議が行われてほしかった。野党も倒閣をねらい、不記載事件だけを議論していては政権は取れないだろう。 有権者は、まず投票に行くことが大切です。そして候補者の主張に耳を傾け、少しでも「ましだ」と思われる人を選ぶことが、民主主義の基本なのではないか。時間はかかるが、そうしていけばダメな議員は少しずつ淘汰(とうた)されていく。 投票先を決める視点としては、困窮する経済など目の前の問題だけでなく、自分の子供や孫たちが生きる10年後、100年後にこの国がどうあるべきかというグランドデザイン(長期にわたる大規模な計画)も含めて考えたい。 茨城は県北地域で過疎高齢化が進む一方、急激に都市化する県南地域ではインフラ整備が追い付かず、地価も高騰するといった多様な問題を抱えている。 各小選挙区から選出される衆院議員は、地域のそうした目の前の問題について、有権者の関心を集めるための甘い言葉(公約)を示すだけでは物足りない。それらが実は、日本全体に共通する課題として国政レベルで議論できる力を持っているかどうかが、衆院議員としての価値を問われるところだ。 地元の陳情を役所へ持っていくだけの衆院議員は、もはや必要ない。
むらかみ・のぶお 立教大大学院修士課程修了。自動車メーカー勤務後、放送作家となり、5千タイトル以上の番組を手がけたほか、映画、CM、舞台などでも活躍。平成24年から茨城大教授、今年4月から特任教授。専門はメディア論。趣味は全国各地の神社巡りと御朱印集め。お薦めの一冊はマックス・ヴェーバー著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(岩波文庫)。「19世紀と20世紀にヨーロッパがなぜ世界をリードしたかについて書いてあり、何度も読み返してます」