サウナにヨガなど地元ツアーも! 企業のまちづくり 家電メーカーの”地域密着”EC【WBSクロス】
全国で自治体ではなく企業がまちづくりを手掛ける事例が増えています。その狙いはどこにあるのでしょうか? 神奈川・藤沢市。この町にあるベーカリーの「NOLAN」。創業は1990年で市内に3店舗を構えています。2種類の天然酵母を使い分けるなど、素材にこだわることで、長年地元の人に愛されてきました。店にやってきた男性が「ハックツ!」と書かれた箱に、焼きたてのパンを詰め込んでいきます。男性は新規事業を手がけているパナソニックの社員、芦澤慶之さんです。 「パナソニックで運営している地域のECサイト『ハックツ!』をやっている。注文があった商品をピックアップしている」(芦澤さん)
1年前にパナソニックが始めた地域密着のECサイト「ハックツ!」。藤沢市内31店の約180点の商品を扱っています。利用者から注文が入ると、パナソニックが手配した車が週に1度、商品をそのお店から集荷して回ります。商品は市内の受け取りスポットに集められ、利用者はそこで商品を受け取る仕組みです。商品に上乗せした手数料がパナソニックの売り上げになります。 店からの集荷を終え、芦澤さんがやってきたのは、藤沢駅前のコワーキングスペース。ここが利用者の受け取りスポットの一つです。日が暮れると、仕事帰りの客が商品を受け取りにやってきます。受け取り場所は、現在藤沢市内に6カ所。1年で登録ユーザー数は1100人を超えました。 実はパナソニックは10年前、藤沢市の工場跡地にスマートタウンを作り、民間によるまちづくりを開始。これまでテクノロジーを生かした配送サービスの実証実験をしていましたが、「ハックツ!」でコミュニティの活性化に役立つよう進化させたのです。 「今までは家電などで人々の心を豊かにしてきた。これからは地域コミュニティや人とのつながりで心を豊かにしていく。ここをわれわれのミッションとしてやっている」(芦澤さん) このサービスはまちづくりに重要な雇用にも貢献しています。「ハックツ!」に無農薬の野菜を出品する「柿右衛門農園」。農園側は注文を受けた野菜を箱に入れるだけ。「ハックツ!」のスタッフが運んでいった先で仕分けや梱包が行われます。商品を持っていた場所は障害者たちの就労施設です。ここで働く人たちが集めたパンや野菜などの商品を袋詰めしていきます。地元の障害者の雇用も産んでいるのです。 「彼らも仕事で地域に貢献していきたい」(芦澤さん) 様々な狙いで企業がまちづくりを手がける事例が全国に広がっています。 山形・鶴岡市では地域で儲ける仕組みを作るため、ベンチャー企業の「SHONAI」がホテルや児童施設を整備しています。トヨタ自動車はAIや自動運転など先端技術を導入するための実証都市「ウーブン・シティ」を静岡・裾野市に建設しています。