国王の退位により民主主義体制へ移行することに…ブータンで行われる“初めての選挙”のゆくえは 「お坊さまと鉄砲」を採点!
〈あらすじ〉
2006年、ブータンは国王の退位により民主主義体制へ移行することになった。政府は、選挙制度を知らない国民のために、理解促進を目的とした模擬選挙を行うと発表。ある山中で瞑想修行中だった高僧はこの報を聞き、若い僧侶タシ(タンディン・ワンチュク)に「物事を正さねばならん」として、次の満月までに銃を2丁手に入れるよう依頼する。 下山して村で銃を探すタシは、アンティーク銃コレクターのアメリカ人と出会い、ある約束を交わす。そして満月の日、皆の前で、高僧は法要を執り行うが……。
〈解説〉
『ブータン 山の教室』に続く、パオ・チョニン・ドルジ監督・脚本作。初めての選挙に戸惑う人々と、銃を巡る騒動をユーモラスに描くヒューマン作品。112分。 中野翠(コラムニスト)★★★★☆大きな青空、緑の山なみ、高僧の知恵、初めての“選挙”というもの……。超シンプルな暮らし。つかのまだが、憧れる。 芝山幹郎(翻訳家)★★★★☆桃源郷の理念にやや寄りすぎだが、天然の微笑と風景が牽引力。アルトマン的多声構造で、無知と無垢を描き分けている。 斎藤綾子(作家)★★★★☆いかに争わない幸せを大切に生きるか。強制される民主化の可笑しみと、祈りの中の平穏な生活に深い慈しみを感じた。 森直人(映画評論家)★★★★☆村の珍騒動として伝統と近代化の葛藤を図解化した風刺喜劇。選挙というシステムを根底から問い直す思考実験でもある。 洞口依子(女優)★★★★☆ブータンの高地からの視点。民主主義、ネット、銃等がこの国にもたらす状況を風刺がきいたコメディタッチで見せる。 INFORMATIONアイコンお坊さまと鉄砲(ブータン、フランス、アメリカ、台湾) 12月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開 https://www.maxam.jp/obousama/
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年12月12日号