収入は減っても… わたしが17年続けてきた教師の仕事を辞め、コストコで商品補充の仕事を始めた理由(海外)
ケリー・アンドリューズ・デニーさん(44)は、アメリカのオレゴン州ポートランド近郊在住の母親だ。 デニーさんは17年間、高校で数学教師をしていて、2020年までは自分の仕事が大好きだった。 2024年、デニーさんがコストコで働き始めると、家に帰ってきた時の雰囲気が前よりも軽やかに見えると夫に言われたという。 ※この記事はケリー・アンドリューズ・デニーさん(44)への取材をもとに聞き書き、編集したものです。 わたしは2007年に高校の数学教師として働き始めた。ポートランドにある都市部の学校で、低所得層の子どもたちが多かった。この仕事がとても好きだった。 初めの頃は苦労も多かった。初出勤の日の前日には、生徒が自殺した。その学校に勤めていた最初の7年間で、わたしたちは少なくとも毎年1人の生徒を失った。複数が自殺だった。 精神的にも厳しかったけれど、なんとか立ち直ることができた。自分の感情に対処し、大量の仕事もこなした。ただ、最終的に限界を感じたわたしは教師を辞め、代わりにコストコで働くことにした。
母親になったことをきっかけに少しずつ変化が…
2013年に子どもが生まれると、自分の気持ちが変化し始めた。仕事のせいで自分がいかに疲弊しているかに気付いた。それでもわたしはこの仕事が大好きで、毎日仕事が楽しみだった。 わたしは常に思ってきた。教えたくない教師は教えるべきではない、と。生徒に悪影響を及ぼすからだ。わたしはまだ教えたかった。 ところが、2020年のパンデミックをきっかけにわたしの"教えること"への情熱が失われ始めた。 コロナ禍でわたしは画面越しに子どもたちに教えることになった。子どもたちがカメラを"オン"にすることはまずないので、わたしは何も映っていない画面に向かって教えていた。こうした教え方で、情熱を維持するのは難しかった。 オンライン授業が始まってから数カ月、2020年の春には片頭痛が起き始めた。強いめまいを感じ、普通に歩くことができなかった。病院でさまざまな検査もしたけれど悪いところは見つからず、担当医からは前庭性片頭痛だと言われた。初めはそこまで頻繁に頭痛は起こらなかった。ただ、一度起こると、長い時は4日くらい動けなくなった。 翌年の春、卒業後も付き合いが続いていたわたしのかつての教え子が撃たれ、命を落とした。ものすごく大きなショックを受けた。
Lauren Crosby Medlicott