新安全・環境規制の適合遅れ…ダイハツ、8車種超を苦渋の生産停止
受注機会損失どう防ぐか
ダイハツ工業は10月末から予定する8車種以上の一時生産停止に向け、停止期間の短縮や生産再開後の増産に取り組む。11月からの新たな安全・環境規制に適合が遅れる車種の生産を止めるため、再開が遅れると受注も減少する見通しだ。生産停止に伴う受注機会の損失を防ごうと、販売店の顧客支援や集客イベントも強化する。新型車の投入はめどが立たないが、既存車の改良による新規制適合を優先し、安全性などの価値を高め巻き返す。(大阪・田井茂) 【写真】ダイハツは展示会への出展再会で受注機会損失防ぐ 「7月の受注はすごく良かったが、9月は小さくなったように見える」。ダイハツの武田裕介役員営業CS本部長は、10月末からの車種を限った生産停止などによる影響をこう見通す。 同社は規制適合の認証試験不正で全車種の出荷停止を2023年12月に国土交通省から指示された後、24年2月から徐々に生産・出荷を再開。ダイハツ車を待ち望む需要も相まって、4―8月は受注が前年同期比で6%増えた。しかし、認証不正車の再試験や不正の温床とされた短期間開発を改めた反動で開発が遅延。このため、11月からの新規制適合に軽乗用車など8車種以上の改良が間に合わなくなった。 改良を終えれば受注も正常化するが、初期計画では軽の乗用車・商用車と登録車の乗用車で1―7週間、軽トラックで半年間生産を止める。この影響を極力避けるため主力車種の改良を優先するなど、計画の縮減に努める。武田本部長は「この秋は法規対応をしっかりやる。計画を精査するが、車種によっては法規対応まで間が空くかもしれない」と明かす。そこで車種によっては現モデルの在庫を確保し、生産再開後は一気に増産できるよう部品メーカーに協力も求める。 受注をつなぎ留める役は、販売会社の約1000店と業販店の約5000店からなる販売店網だ。「車を運転すれば10分でダイハツの看板が見える布陣を整えてきた。日本の交番と同じほどある」(武田本部長)。 販売店は車検を迎える顧客らに寄り添い要望を聞き、サポートする。長期には販売店での飲食・物販展、乗合送迎車の運行、安全運転講座など地域に密着した集客イベントも増やす。武田本部長は「車を売って修理するだけでなく生活のパートナーに変わる」と意気込む。交通が不便で高齢化も進む地域の頼りにされる店舗づくりで来店を促し、ダイハツファンを絶やさない考えだ。 短期間開発と決別し新型車を投入する余力もなく、商品力は低下が懸念される。販売ランクで常に上位だった車種が転落し、軽の競合他社に大きく水をあけられた。だが「軽は新しければ良いというものでない。すごく切り詰めて開発するのであまり陳腐化しない。現モデルも人気車は多い」(同)と自信を示す。 新規制適合の改良で付加価値を高め、物価上昇の価格転嫁も進める。「ダイハツは良い車づくりに集中してくれ、と販売店から励まされている。顧客と向き合い販売現場の意見も聞き、知恵と技術で本当に良い車をつくる」(同)と真の復活を見据える。