「米国第一」トランプ氏大勝、保護貿易に警戒感…追加関税なら日本製品を直撃
「米国第一」を掲げる共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利した。あらゆる国を対象とした関税引き上げや、国際的な貿易枠組みからの撤退、電気自動車(EV)優遇策の見直しなどを掲げており、日本経済も影響を受けることは必至だ。(久米浩之、田中俊資、坂本幸信) 【写真】敗れたハリス氏…民主は「戦犯」探し活発化で泥仕合
「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ氏は、保護主義的な通商政策を再び打ち出す見通しだ。選挙戦では、第1次政権で激しく対立した中国からの輸入品には60%超の関税を課し、日本を含む全ての国からの輸入品には10~20%の関税をかけると主張してきた。
日本の2023年の国別輸出額は米国が20兆2602億円と、4年ぶりに中国を上回り、最大の輸出先となった。自動車や半導体製造装置、電子部品など日本の主要製品が多く、全体の約2割を占める。トランプ氏が公約通りに追加関税をかければ、日本製品の米国市場での販売価格は高くなり、価格競争力を失う。
バークレイズ証券の推計では、トランプ氏の関税政策が実現すれば、中国の実質国内総生産(GDP)は2・0%減、日本も0・3%減となる見通しだ。同証券の馬場直彦氏は「関税政策の不確実性が高まり、日本企業の設備投資に影響が出かねない」と指摘する。中国が報復関税で反撃し、貿易戦争が繰り返される恐れもある。
トランプ氏は他国との通商協定も白紙に戻す構えだ。前回、大統領に就任した直後には、米国が旗振り役だった環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。その後、バイデン大統領はTPPの代わりに、対中国を念頭に置いた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を打ち出して軌道に乗せた。しかし、トランプ氏はIPEFを「TPP2」と批判し、離脱する意向を示す。
経済産業省幹部は「国際的な経済連携では、トランプ氏への対応という難題と向き合わざるを得ない」と話す。
USスチール買収 日鉄「年末までに」
日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収する計画は、先行きの不透明感が高まった。トランプ氏は大統領選のさなかにも、「絶対に阻止する。国内に雇用を取り戻す」などと、買収に反対する姿勢を示し続けてきたからだ。