「米国第一」トランプ氏大勝、保護貿易に警戒感…追加関税なら日本製品を直撃
だが、交渉を担当する日鉄の森高弘副会長は7日の決算記者会見で「間違いなく、年末までにクロージングできる」と買収実現に自信を見せた。月内に渡米し、計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)と議論する意向も示した。
買収計画は、外国企業の投資を安全保障上の観点から審査する米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)など、米当局の審査を残すのみの状況だ。日鉄は9月、CFIUSの承認を得て計画を再申請し、審査期限は年末まで延長されている。
日鉄はトランプ前政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏をアドバイザーに起用するなど、トランプ氏の勝利を想定した準備も進めてきた。とはいえ、「トランプ氏に計画を承認させるには何らかのメリットを示す必要がある」(関係者)との指摘もある。森氏は「選挙が終わり、ようやく冷静な議論ができる」と述べるにとどめた。
日鉄は7日、2025年3月期の業績予想を下方修正し、業績悪化も懸念される。森氏は「日鉄が成長するには、海外の成長市場を取り込むしかない。高級鋼の需要増が期待できる米国市場は、最後に残ったピースだ」と強調した。
車大手 生産拠点見直しも
米国を主力市場としてきた日本の自動車大手は、トランプ氏の政策転換を警戒する。
製造業の国内回帰を目指すトランプ氏は大統領選で、隣国メキシコで製造される全ての自動車に200%の関税を課すと表明した。現在は、米国とメキシコが結ぶ貿易協定により、一定の条件を満たせば関税はゼロ。日本勢の多くがメキシコに生産拠点を設け、米国へと輸出している。
メキシコで約20万台を生産し、約8割を米国に輸出するホンダの青山真二副社長は6日、「恒久的な関税なら、米国内や、関税対象にならない国での生産を考えざるを得ない」と述べ、生産拠点を移転する可能性を示した。
日産自動車は2023年度、米国で約90万台を販売したが、うち24%はメキシコ生産だ。内田誠社長は7日の記者会見で、「中長期的な方向は変わらないが、よく注視したい」と述べるにとどめた。