ウクライナのオリガルヒと汚職――EU加盟に立ちはだかる「非公式制度」
ドラマ「国民のしもべ」にみるオリガルヒ
Pavlo Vakhrushev - stock.adobe.com
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻以降、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領にスポットライトが当たるにつれて、話題になったウクライナのドラマがある。「国民のしもべ」である。このドラマでは、ゼレンスキー演じる歴史教師のゴロボロジコが、腐敗したウクライナ政治に怒りを爆発させる動画がSNSで拡散され、一躍時の人となったゴロボロジコが選挙に立候補して大統領になり、政治改革を行うというストーリーだ。 このドラマで人気を博したゼレンスキーはその後、ドラマのタイトルと同じ名称の「国民のしもべ」党を支持母体に2019年の大統領選に出馬し、現実に大統領となった。「国民のしもべ」は現在ウクライナの与党である。 このような経緯から、「国民のしもべ」はゼレンスキーの背景を理解するうえで注目されることが多いが、ウクライナ政治を理解するうえでも示唆に富む。ドラマでゴロボロジコ大統領は、政治に影響を及ぼそうとする大富豪のオリガルヒ(新興財閥)達から何かと妨害を受けながら、私的な利得のために権力を侵害するという意味での汚職の根絶を目指して改革案を打ち出し、奮闘する。後述のように、現実のウクライナ社会でも、汚職やオリガルヒは長く続く根深い問題であり、ゼレンスキー大統領も反汚職改革を推進させている。このドラマはこうした現実社会を反映しており、「社会の害悪」として描かれるオリガルヒは、こんにちのウクライナ政治を理解する上で欠かせない。
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松嵜英也