阪神D5位・佐野大陽、野球部に入りたくて母の想像超えた幼少期
【なにわ虎男子】阪神の新入団選手にスポットをあてた連載「なにわ虎男子」。ドラフト5位・佐野大陽内野手(22)=日本海L富山=の第1回は、大好きな野球にのめり込んでいく幼少期に迫る。ドラフト当日にテレビの中で息子の目からあふれた涙は、母・梓さんが初めて見た〝うれし涙〟だった。 【写真】阪神D5位・佐野大陽、虎風荘の食事で「朝、1キロ増えていました」 ドラフト会議で自分の名前が呼ばれても、実感が湧くまで少し時間がかかった。5位で阪神から指名された佐野の目から大粒の涙が落ちた。 「信じられなかった。僕に携わってくれた人や、支えてくれた家族の顔が浮かんできた。一人の力じゃここまでこれなかったので、感謝の気持ちが表れたのかな」 母・梓さんの目にも涙があふれた。「テレビであんな姿見たら泣いちゃって。ほんとによく頑張ったねって。初めてのうれし涙というか、報われた涙だったんじゃないかな」。小さいころから感情が出やすい子供だったが、初めて見た種類の涙だった。 佐野家の長男として生まれた。「『たいようです!』って顔をして生まれてきた。『たいようじゃないなら何でもいい』と旦那と少しけんかして、折れてくれました」。名前負けをしないように、点を取った字で「大陽」と名付けられた。 昔から体を動かすことが大好きだった。「気持ちがすごく前面に出る子だった。負けず嫌いで、幼稚園の運動会はバレないようにフライングして1番になったりしていました(笑)」。そんな中で初めて梓さんが〝裏切られた〟のは小学1年の時。「野球をしたい」と頼み込んできた息子に、入部の条件を出した。 「自分で『入れてください』って言いに行けと言ったんです。気持ちが強くないと無理だと思ったし、ガツガツいける子じゃないと思っていたので。そしたら行っちゃったもんだから、入れるしかなくて(笑)」 やる気満々で前島雅樹監督のもとに向かい、富士宮リトルイーストに入部。上級生になると、平日は同監督の家で練習した。雨が降る日も両親とバッティングセンターへ向かい、お小遣いを使って白球を弾き返した。指揮官は「野球バカというか、練習が終わってもずっとキャッチボールをしているような子」と目を細めた。 技術には輝くものがあったが、もっと学んでほしいことがあった。「うまいだけじゃなくて、仲間を引っ張れる選手になってほしい」。主将を託すと、誰よりも練習してチームの先頭に立ち続けた。負けた日には涙を流すこともあったが「ただ悔しいじゃない。これだけやったのに、みたいな思いをすごく感じましたね」と振り返る。