夏ドラマ名作ベスト5。“西園寺さん”も最高だったけど、圧倒的な面白さのNo.1は
南くんが恋人!?
最後にベテラン脚本家の力を見せつけられた作品を2つ。まずひとつ目は岡田惠和氏脚本の『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)です。 1987年に刊行された内田春菊の人気漫画『南くんの恋人』が原作で、これまで何度もドラマ化されてきた作品を、初の男女逆転バージョンで映像化。主演のちよみ役を若手注目株の飯沼愛が、小さくなってしまう恋人の南くんを八木勇征(FANTASTICS)が演じました。
ただの令和版にあらず! 優しさに溢れた世界に涙
30年前の高橋由美子&武田真治主演のドラマも記憶に残っている筆者は「時代に合わせて男女逆にしたのか……どうせ若い子向け」と決めつけていたのですが、見事に裏切られました。まず、人が小さくなるというファンタジーに困惑しながらも、好きな人と四六時中一緒にいられることが幸せなふたりがとにかく愛おしい! 飯沼&八木が、好感度高く演じていました。 そして、可愛いふたりの恋物語に新たな解釈を加えた岡田脚本が何より秀逸。原作でははっきりと語られなかった「なぜ小さくなったのか?」という問いに、「大切な人たちとお別れをするため」という切なくも愛おしい解が添えられました。 最終回でちよみの母・楓(木村佳乃)は東日本大震災を回想して「亡くなり方が悲しかったとしても、可哀想な人で終わらせちゃいけない。幸せな人にしなくちゃいけない。それができるのは生きている人」と、語ります。悲しい出来事や別れは、どうしようもなく突然訪れる。それでもちよみも南くんも可哀想ではない。ふたり自身も、ふたりを見守る周囲の人たちも決してそうさせない。優しさがいっぱい詰まった作品でした。
新宿野戦病院
そしてこの夏クールNo.1はやはり宮藤官九郎氏脚本の『新宿野戦病院』(フジテレビ系)ではないでしょうか。 「英語と岡山弁を混ぜてしゃべっていい日本人は藤井風だけ」のフレーズも話題になった破天荒な元軍医・ヨウコ(小池栄子)と、気取った美容皮膚科医・亨(仲野太賀)を中心に、新宿歌舞伎町にある「聖まごころ病院」の救急外来で起こる悲喜こもごもが描かれました。