【緊急シミュレーション】イスラエルvsイラン全面戦争勃発! 核兵器と原油を盾に対立する中東の軍事大国、報復合戦の行きつく先には......
■懸念はネタニヤフの暴走、そしてイランの「疑惑」 ただし、今後に向けて再び緊張が高まる不安要素もある。 「米バイデン政権は、イスラエルとアラブ諸国のさらなる関係強化、そして昨年10月にイスラエル・ハマス紛争が始まるまで進めていたサウジとイスラエルの関係正常化に向かいたい。そのためにも対ハマス作戦を早く収束させ、パレスチナ国家樹立・2国家共存の方向へ進むようイスラエルに圧力をかけるでしょう。 しかしそうなると、ネタニヤフ首相が強く反発し、再びコントロール不能になる可能性があります」(菅原氏) そして、もう一点。イラン革命防衛隊の高官は、イスラエルが報復攻撃を行なう前の4月18日にこう述べた。 「イスラエルがイランの核施設を攻撃してきたら、核政策を変えることもありえる」 核政策を変えるとは、いったい何を意味するのか? イランの核兵器開発は、60%の高濃縮ウランを保有した段階で止まっている。再開すればおそらく数ヵ月程度で、核兵器に必要な90%の濃縮が完成する――これが国際社会の一般的な認識だ。ところが、一部では「核開発をひそかに継続している」「すでにほぼ完成している」との疑惑もあるのだという。 「IAEA(国際原子力機関)のイランに対する監視は決して十分ではなく、ひそかに核爆弾級の濃縮ウランを作っていたり、核弾頭の開発を続けたりしている可能性は完全には否定できない。イスラエルもそれを疑っています。 革命防衛隊高官の発言は、『その気になればすぐにできるぞ』という脅しを含んでいるのかもしれません」(菅原氏) もしそれが事実なら、あるいはイスラエルがそれを強く疑っているなら、イランを早期に叩く動機はさらに強まる。前出の河合氏が言う。 「イスラエルやイランが自ら進んで核戦争を選ぶ可能性は低い。しかし、私が以前イスラエルでユダヤ人たちに、『もしイスラエル軍がイランやイラン率いるシーア派連合に地中海に追い落とされそうになったら、核を使うか?』と聞いたら、ほぼ全員が『使うに決まっている』と答えました。 イラン人たちにも、同じ質問をすればおそらく答えは同じでしょう。つまり、どちらかが本当に追い詰められれば、核の撃ち合いが始まる。両国がそういう国であることは間違いありません」 どちらも「やりたくない」。しかし、均衡が崩れた瞬間に破滅へ向かう覚悟はある。際どい綱渡りは続く。 取材・文/小峯隆生 写真/柿谷哲也 時事通信社