【緊急シミュレーション】イスラエルvsイラン全面戦争勃発! 核兵器と原油を盾に対立する中東の軍事大国、報復合戦の行きつく先には......
■イランとイスラエルそれぞれの「想定外」 イスラエルとイランが互いに本土を攻撃し、対立が危険水域に近づいたことは間違いない。ただその後、両国の発するシグナルはむしろトーンダウンへと向かっている(4月24日現在)。その背景を読み解いていこう。 まず、イランが300発以上もの飽和攻撃を決行した直接の理由は、シリアにあるイラン大使館施設内(=国際法上は自国領土に準ずる場所)にいたイラン革命防衛隊コッズ部隊のムハンマド・レザ・ザヘディ准将が、イスラエルによる空爆で殺害されたことだった。国際ジャーナリストの河合洋一郎氏はこう語る。 「コッズ部隊は最高指導者ハメネイ師直属の超エリート特殊部隊です。主に海外で活動し、ヒズボラをはじめとするシーア派民兵組織を各地でつくり上げ、ハマスへも兵器を供給している。イスラエルの天敵といっていいでしょう。 ここ数ヵ月だけでザヘディ准将以外にも、コッズ部隊の情報部高官や司令官がシリアで暗殺され、その際には周囲の高官たちも巻き添えになっています。イランが大規模な報復に踏み切ったのは、一連の暗殺に対する怒りの蓄積も影響したかもしれません」 ただし、イランはイスラエルとの対立が米軍を巻き込んだ全面戦争にまで発展することを避けるために〝保険〟をかけた。国際政治アナリストの菅原出氏が解説する。 「イランは攻撃の72時間前に、アメリカに加え周辺諸国のサウジアラビア、UAE、カタール、エジプト、トルコに対しても、ミサイルや無人機が何時にどこを通過するか、詳細に通達していました。エスカレーションを望んでいるわけではないという立場を示した形です」 この情報により、「予定どおり」に攻撃は99%撃墜された。しかし、イランには「想定外」があったと菅原氏は指摘する。 「サウジやヨルダンなどが、イスラエルを守る迎撃作戦にまで協力したことです。アラブ諸国が米軍のミサイル防衛システムとデータリンクを構築してイスラエルを守るなど、以前ではありえなかった。 トランプ政権時代にアメリカがつくった〝中東版NATO〟こと『防空同盟』が機能したわけですが、イランにとっては驚くべき事態でした」 一方、ほぼ被害が出なかったイスラエルの側にも「想定外」があった。 「ガザ侵攻で世界から孤立するイスラエルのネタニヤフ政権は、イランを悪者に仕立て上げ、アメリカを再び味方につけるチャンスをうかがっていました。ところが実際にイランの攻撃が起きてみると、アメリカ主導の『防空同盟』なくしては防ぎきれないものだった。 これで米バイデン政権はイスラエルへの影響力を強め、『仮に反撃するとしても、死傷者が出ないよう配慮する』ことを求めました」 その結果が、核施設近くの防空レーダーへの3発のミサイル攻撃という、人的被害なき〝絶妙な報復〟だったのだ。 「ネタニヤフ首相のバックにいる極右勢力は、まだイランを本気で叩きたいと考えている。しかし、イスラエル軍はあらためて米軍のすごさ、アメリカの協力の必要性を痛感したはずです。今は国防大臣含め軍側が、これ以上のエスカレーションを招く行動に待ったをかけているでしょう」