【緊急シミュレーション】イスラエルvsイラン全面戦争勃発! 核兵器と原油を盾に対立する中東の軍事大国、報復合戦の行きつく先には......
中東の二大軍事強国で、互いの存在そのものを否定する宿敵同士が、初めて本土へミサイルを撃ち込み合った。世界中で「全面戦争」の危機が叫ばれたが、その戦いがどんな形になるのかはほとんど示されていない。それぞれの戦力と動機、そして核を巡る思惑から多角的に検証する。 【写真】核兵器の開発に力を注いできたイラン軍ほか * * * ■イランの本気の攻撃は数万~十数万発規模に 4月13日、イランは初めてイスラエル本土に対し攻撃を行なった。これまでもイスラエル側はイラン国内外での暗殺・破壊工作、イラン側は国外の代理勢力による攻撃を仕掛けており、長年〝影の戦争〟状態にあった両国だが、ついに行なわれた直接攻撃の規模は、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆ドローン合わせて300発以上に及んだ。 これに対し、4月19日にイスラエルも報復を敢行。シリアもしくはイラク上空の戦闘機から、イラン南部イスファハン州の核施設周辺の防空レーダーへ向け3発のミサイルを撃ち込んだとされている。 これらの応酬は何を意味するのか。その裏側を読み解く前に、世界中が懸念する中東の軍事大国同士の「全面戦争」がどんなものになるのか、両国の戦力を基にシミュレーションしてみよう。 * * * 詳細は後述するが、相手を叩く動機がより強いのは、イランの核開発関連施設を潰す機会を長年うかがっているイスラエルだ(過去にもシリアやイラクの原子力関連施設を空爆している)。イラン中部のフォルドゥにあるウラン濃縮施設近郊を訪れた経験のあるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう言う。 「宗教都市コムの郊外にあるその核施設を見るために、私は長距離バスの右側の席に座っていました。しかし、いよいよ施設のフェンスが見え、カメラを窓に向けると、周囲の席のイラン人男性たちから『ノーノー、撮るな撮るな』の大合唱。そこに何があるのか皆が知っているのです」 作戦決行は夜中だ。まず、ヨルダンの対イラク国境近くの秘密基地から、40時間在空可能な無人偵察機「エイタン」、航続距離1000㎞の徘徊型自爆ドローン「ハロップ」が離陸。エイタンがイラン国境に到達し、イランの防空レーダーが作動したところで、そのレーダー波を探知したハロップが次々と特攻攻撃を仕掛け、防空網に穴をあける。 続いて、ヨルダン上空を飛ぶ戦闘爆撃機F-15Ⅰから長距離ミサイルが発射され、さらに防空網をズタズタにする。そこで登場するのがイスラエル空軍の空爆部隊だ。 「おそらくアメリカはステルス戦闘機F-35Ⅰをイランに接近させることは許可しないので、計12機のF-15Ⅰがバンカーバスター(地中貫通爆弾)を装備して任務に当たるでしょう。攻撃目標はイラン国内の核施設のうちナタンズ、フォルドゥ、ブシェールのいずれか1ヵ所です」(柿谷氏) この空爆作戦と並行して、それ以外の核施設には弾道ミサイル「エリコ3」を撃ち込み、徹底的に破壊する。 隣国同士の戦争なら、この後に地上軍が侵攻するのが定石だが、元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう言う。 「陸上部隊がイスラエルを出てから、イランの首都テヘランまでの距離は実に1500㎞。戦車中心の機甲戦力は燃料を運ぶタンクローリー、水や糧食を運ぶ兵站トラック、通信関連車両などを引き連れて進軍しなければならず、テヘラン陥落まで達成することは極めて困難です。地上侵攻は行なわれないでしょう」