「行政は万能ではない」「避難するかはあなたが判断」──住民主体の防災対策に方針転換 中央防災会議
西日本豪雨が突きつけた行政の限界と新しいステージ
しかし、やはり、この報告書の中で注目したいのは、こうした具体案の前にある「避難に関する基本姿勢」という項目に書かれた内容だ。 この部分には「自らの命は自らが守る」「自らの判断で」「住民主体の」などといった表現が並んだ後、「住民主体の防災対策に転換していく必要がある」と書かれている。災害対策基本法では、「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することに鑑み、組織及び機能の全てを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる」ことが国の責務とされている。それでもあえて、「自らの判断で避難行動をとることが原則」という文言を基本姿勢として打ち出したのはなぜだろうか。 その答えは、同じ項目の中にある。 「行政は防災対策の充実に不断の努力を続けていくが、地球温暖化に伴う気象状況の激化や、行政職員が限られていること等により、(中略)既存の防災施設、行政主体のソフト対策のみでは災害を防ぎきれない」「家族構成等には違いがあることから住民一人ひとりに即した情報を示すことは困難」「突発的な災害や激甚な災害では、避難勧告等の発令が間に合わないこともある」──。 これらの記述からは、西日本豪雨をはじめとする近年の災害によって、行政の取り組みだけでは災害に対応しきれないという現実を突きつけられたことが読み取れる。 報告書の「おわりに」の項目には、「国民の皆様に強く求めること」として「行政は万能ではありません。皆さんの命を行政に委ねないでください」「避難するかは『あなた』が判断してください。皆さんの命は皆さん自身で守ってください」などのメッセージも並ぶ。 作業部会の委員からは「日本の防災の思想を変える」「さらりと書かれているが、大きな転換を示していると認識すべき」「防災政策の転換で評価する」といった発言があったが、「防災対策の方向性を根本的に見直し、これまでの延長線上だけではない取り組みが必要」という新しいステージに入ったといえるだろう。