サステナ情報開示、中小上場企業が今すぐやるべきことは
記事のポイント①世界各国でサステナ情報開示に関するルールが整備されてきた②時価総額5000億円未満の企業は2030年3月期以降に義務化が適用される③では、時価総額1000億円以下のプライム企業は何をするべきか
■時価総額1000億円以下のプライム企業が直面するサステナ情報開示の課題② 筆者はサステナビリティ情報の開示支援を専門とするコンサルタントです。前回記事で、時価総額が比較的低いプライム企業について、「サステナビリティ情報開示に対応するための社内リソースがない、コンサルタントも確保できない」という課題が数年後に社会問題化するという問題意識を述べさせて頂きました。この課題を微力ながら解決したく筆をとらせて頂いています。(有川 誠一)
時価総額が1000億円以下のプライム企業の皆様がまず確認すべきこと、それは「自分の会社はいつからサステナビリティ情報開示が義務化されるのか」を確認することです。 いま世界各国でサステナビリティ情報開示に関するルールがリリースされていますが、まず抑えるべきは日本の基準です。2024年6月に開催されたサステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(第三回)によると、時価総額の大きい順に段階的に適用する案が有力です。 上表によると時価総額5000億円未満の企業は早くて2030年3月期以降に義務化ですので、適用まで5年以上あります。来年3月までに日本のサステナビリティ情報開示基準が最終化される見込ですので、それまでは慌てず敢えて静観するのが得策でしょう。 加えて、2026年3月期に日本のサステナビリティ情報開示基準を早期適用する会社が数社現れる可能性があります。その場合、開示事例を見れば貴社への影響について、より具体的なイメージを持つことができ、効率的にサステナビリティ情報開示に取り組むことができるでしょう。 なお、サステナビリティ情報開示導入プロジェクトは筆者の周りではコンサルタントを使って約2年かけるケースが多いです。したがって、コンサルタントを活用するリソースがない企業は、早めに取組む必要があると思います。 コンサルタント抜きでサステナビリティ情報開示導入をやり切れるか否かは、実務が成熟していないため、現時点で何とも言えません。しかし、自社リソースを育成することでコンサルタントへの依存度は間違いなく減らせますので、将来に向けた人材育成は必須です。 要注意なのはEUのサステナビリティ情報開示基準(CSRD/ESRS)です。こちらはEU域内で数十億円程度のビジネスでも、2025年12月期から第三者保証付きでEU拠点に関するサステナビリティ情報開示が求められる可能性があります。 具体的には①資産合計€25M②売上合計€50M③従業員数250人――の3要件のうち2つが2会計期間連続で超えたら適用となります。 この検討を漏らしている企業が多く、比較的規模が小さいプライム上場・非上場企業からの相談が最近増加傾向にあります。こちらは第三者保証が必要なため、適用対象と判明したら今すぐ基準概況を理解のうえ、第三者保証する可能性がある現在のEU拠点財務諸表監査人までお問い合わせください。 こちらは至急の対応が必要です。EUのサステナビリティ情報開示基準の概況は朝日新聞の記事がとっつきやすいと思います。詳細はJETROのガイダンスを確認ください。やや難しく感じられるかもしれないですが、コンサルタントの立場で見る限りよくできている内容です。 なおEU以外の各国のサステナビリティ開示の動向はこちらで確認ください。現地で上場していない限り適用可能性は低いですが、非上場会社も適用対象となる国(例:オーストラリア)で適用対象となるケースが散見されます。 皆様に役立つ記事になるよう、シンプルかつ重要な箇所に絞って投稿させて頂きます。購読者の皆様でもし質問、ご感想ありましたらオルタナ編集部までお問合せ下さい。皆様より直接頂く声を尊重して、今後の記事作成にも役立てていきたいと考えています。