【毎日書評】「いつも人に振り回される」人の思いこみを変える方法
他人に「振り回されている」と感じた経験がある方は、決して少なくないはず。事実、心理カウンセラーである『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(大嶋信頼 著、リベラル文庫)の著者によれば、人は職場の人間関係、恋愛、家族関係など、まわりの人の気持ちばかりを考えすぎて行動してしまうとき、「振り回されている」と感じるものなのだそうです。 「人に振り回されてしまう」という現象を取り上げたときに、一見すると、それは個人の性格の問題、と思われることも多いのですが、実は人間関係の影響を考えずにこのテーマの答えを出すことはできない、と私は考えています。 「人間がお互いに影響し合っている」という事実は社会学者によって説明されてはいるものの、精神科医や心理学者がそのような説明をしている本はあまりありません。(「はじめに」より) そこで本書では、専門用語をなるべく使わないように意識しながら、「不満を感じているにもかかわらず、人にどうしても振り回されている理由」と、そうした状況を打破するための「暗示」を紹介しているのだそうです。 でも、「暗示」とは? 一見奇妙に思われる「暗示」も、「他人から悪い影響を受けづらくする」「嫌なことが起こってもうまくかわせる」「自分や他人の『思いこみ』を書き換え、良い人間関係をつくる」などの効果を発揮します。(「はじめに」より) 本書で説明されている分野は、精神科医も心理学者もあまり研究していない領域なのだとか。そのためピンとこない部分があるかもしれませんが、それでも「そんなこともあるかもしれない」と思いながら読み進めてほしいと著者は述べています。 そんな本書の第2章「知らぬ間にできあがる力関係の正体」のなかから、きょうは「人の不満や不安が『うつって』しまう!?」に焦点を当ててみたいと思います。
となりの人が緊張していると、自分まで緊張する
相手のことばに一喜一憂したり、批判や悪口を真に受けすぎたり、相手の都合にばかり合わせてしまったり──。そうやって他人に振り回されてしまうのは、「個人の性格」のためではなく、「脳」の問題のせいなのだそうです。 脳の中には「ミラーニューロン」という「人の行動をまねする」神経細胞があります。 1996年にイタリアの脳科学者によって発見された神経細胞の「ミラーニューロン」は、他人の動作を見ているとき、脳の中で自動的にその他人のまねをする、ということがわかっています。(46~47ページよりより) つまりその名称は、他人の行動を見たとき、自分も“鏡(ミラー)”のように反応することから名づけられたもの。緊張している人のそばにいるだけで自分まで緊張してしまうのも、脳が自動的に相手のまねをし、緊張してしまうからだというのです。(46ページより)