横浜流星、“盟友”藤井道人監督とだからこそ作り上げられた濃密な撮影空間 映画『正体』現場レポート
◆原作者、監督、俳優陣の熱意が呼応する極上の逃亡サスペンス・エンタテインメントが完成
相手によって異なる顔を見せる鏑木の姿から、インターネットやSNSが身近となり、相手の本当の姿が見えにくかったり、ある一面だけで人を判断してしまうなど、現代社会に潜む不条理と重なる部分を感じる人も多いかもしれない。藤井監督は「原作に描かれているテーマと、僕と流星が取り組みたかったことには、根幹的にすごく近いものがあった」と吐露し、「原作者の染井先生は、ラッシュを観て『最高です!』と言ってくださった。『これまでも藤井監督と横浜さんの映画を観てきていますが、お二人は僕の考えていることや感じていることと近いことをやっていると思っていました』とお話ししてくれて、ものすごくうれしかったです」としみじみ。 「僕と流星が脂の乗っている時期に、極上のエンタメを作りたいと思って取り組んでいる作品です。『これはスクリーンで観た方がいいよ』と全国で楽しんでもらえるものになっている自信がある。サスペンスだけれど、しっかりとしたヒューマンドラマであり、エンタメであるものを作りたかった」と力を込めつつ、夏編と冬編にわけて撮影ができたことについても「俳優部の皆さんも、その時間が大事だったと言ってくださった。これだけ豪華な俳優部の皆さんを夏と冬に分けて拘束することは、制作陣にとってもなかなかハードルが高いこと。でもそうしたことによって生まれる豊かさについて、皆さんが呼応してくれた。時間を経たことが、しっかりと画にも出ている」と充実感をみなぎらせる。横浜が体現した、鏑木のまっすぐな眼差し。鏑木を通して、自分自身も見つめていく周囲の人物たち。本作では、彼らの揺らぎ、信念、覚悟などアップを交えて真正面から捉えていく。邦画界にはこれだけ素晴らしい役者がいるのだと心が震えるような場面の連続で、スクリーンにお目見えする日が今から楽しみで仕方がない。(取材・文:成田おり枝) 映画『正体』は、11月29日より全国公開。