白川郷に押し寄せる人口比1000倍の観光客 それでも「観光客嫌い」が起きない理由とは?
ますます拡大するインバウンド市場。外国人観光客の目的地は、日本旅行の定番である東京・京都から地方へと移りつつある。なかでも、世界遺産・白川郷の合掌造りで知られる岐阜県白川村には、年間100万人を超える外国人観光客が押し寄せるという。現地では今、何が起きているのか。白川村役場観光振興課、小瀬智之課長補佐より話を聞いた。
人口の1000倍の観光客が訪れる村
──外国人観光客は、いつごろから増加しましたか? 小瀬 大きなきっかけは世界遺産に登録された1995年ですが、ここ10年ほどで飛躍的に増加しました。2013年の外国人観光客の年間訪問者数は15万人で、全訪問者の1割程度。しかし、2019年には100万人を超えました。 外国人観光客の国籍も多様化しています。以前は台湾やタイなどアジア圏の方が多くを占めていましたが、現在は欧州や南米など多種多様な地域からいらっしゃっています。 ──白川村の人口は約1400人。外国人だけでなく日本人観光客も含めると、人口の1000倍以上の観光客が訪れている計算になります。すさまじい状況ですね。 小瀬 はい。東京都の国分寺市に日本国民全員が来る状況をイメージしていただければ、その賑わいがお分かりになるかと思います。
村人の「生きる姿」が付加価値に
──どんな要素が、外国人観光客を引き付けているのでしょうか? 小瀬 一番は、白川郷に広がる日本の原風景だと思います。雪が積もる時期には特に神秘的になりますので、東南アジアをはじめとする雪に触れたことのない国の方には非常に魅力的に映るようです。 ですが、真の要因は、白川郷の「生きた世界遺産」としての希少性にあるのではないかと思います。 私は趣味で海外の数多くの世界遺産に訪れた経験がありますが、多くの地が観光地化しています。どんなに荘厳な景色や遺跡があっても、それがコマーシャライズされきったのを見た瞬間、「げんなり」してしまうものです。 一方、白川郷には合掌造りの家に住む人々がいて、そのなかでは実際の生活が営まれています。そうした状況は世界的にたいへん珍しく、商業化しきってしまった他の有名観光地とは大きく異なります。