竜王戦七番勝負佳境へ…「対応力」の藤井聡太竜王と「工夫」の佐々木勇気八段、ハイレベルの戦い
大橋 本局の藤井竜王は攻め合うというか、後手番ながら積極的な手順を指していって、ちょっと裏目に出てしまった印象です。ただ、終盤は苦しいながらも勝負手を重ねて、容易に土俵を割らない指し回しが印象に残りました。
第3局…予想外の戦型にも屈せぬ研究力
福崎文吾九段 居飛車党の佐々木八段が、角交換振り飛車の戦型を選んだのには驚きました。
畠山鎮八段 佐々木八段が居飛車相手に飛車を振るのは7年ぶりだといいます。この戦型になると藤井竜王は予想していなかったはずですが、研究はしてあった。さすがです。
福崎 そうですね。31手目▲6八玉(第3図)に、僕はびっくりしました。一時は7八に寄った玉を6筋に戻す手。手損で致命傷になるおそれがあり、調べておかないと絶対に指せません。藤井竜王は7分の考慮で指した。AI(人工知能)の評価値もほぼ互角でした。
畠山 ▲6八玉に替えて▲8八玉△7二金だと、後手に9筋を突き越されていることが不満なのかもしれません。佐々木八段が途中までリードを奪い、残り時間でも有利でしたが、藤井竜王は決めにきた相手のわずかな勇み足を見逃さず、緩急で揺さぶって勝ちきった。佐々木八段にとって、対抗形の終盤、決めにいく間合いが難しかったと思います。
15日から第4局…シリーズ後半戦展望
藤井竜王は第1局で佐々木八段の研究手順を不発に終わらせ、第3局では角交換振り飛車という予想外の戦型に苦しめられながらも終盤の隙を突いて、それぞれ勝ちにつなげた。佐々木八段は先手番で矢倉模様の意外な作戦を仕掛け、竜王の強気な攻めをはね返して第2局に快勝した。
初のタイトル戦に意欲的な作戦で挑む佐々木八段について、福崎九段は「AIの手よりも、自分で棋理を追究するタイプ」と話す。初戦は時間を使い過ぎて終盤に苦しんだが、第2局から修正した。
藤井竜王は終盤に強みがあるだけに、相手の意外な仕掛けにも序盤はついて行こうとする姿勢が見える。「挑戦者と読み筋が合わず、着手前の確認作業に時間をかけているように映る」と、福崎九段は指摘する。