「アルゼンチンは今」(18)痛みを伴わない政治経済改革はない「大騒ぎのツケは国民が払う」バラマキ政策中断で生活にしわ寄せ=ブエノスアイレス 相川知子
フィエスタは国民が払う
ラテンアメリカでは大騒ぎすることを「Fiesta」フィエスタといいます。それはときには楽しいパーティーのことを指し、パーティーの費用をどのように払いますかという意味で「¿Quién paga la fiesta?」とよくスペイン語で表現します。 去る5月4日、土曜日の人気番組「ミルタと夕食を」に招待された大統領府官房スポークスマンであるマヌエル・アドルニ氏は「(残念ながら)フィエスタは国民が払う」と言及しました。 この番組は豪華な食事をとりながら、その時期の時の人が招待され、アルゼンチンの黒柳徹子さんのような現在テレビ歴80年の司会者ミルタ・レグランが国民を代弁して質問し、対談をする番組です。
公共機関の閉鎖や規模の縮小の波
折しもアルゼンチンは新政権のミレイ大統領がスローガンとして掲げる「No hay plata」(金がない)に端を発し、公共交通機関の値上げ、即ち交通機関への補助金削減、国立対差別研究機関(INADI)などの公共機関の閉鎖、国立社会保障局(ANSES)や国立映画機関(INCAA)の一部機能の閉鎖、科学技術者(CONICET)の解雇や補助金削減による公共支出の削減を行っています。 そのため、組合を中心にストやデモが組織されています。特に助成金の使用用途の明確化への回答をしないがために助成金削減を宣言された国立大学においては、約10万人の国立ブエノスアイレス大学学生を中心に、それを支持する他大学生並びに卒業生のデモが去る4月23日にこれまでにない大きな規模で実施されました。一方で教員への研究費などを削減する給与関係の教職員ストは3月から繰り返し実施されています。
無料の公立病院の現状
公共機関は年々肥大化し、その維持費だけでも大きな国庫支出です。アルゼンチンではhospitalと呼ばれる国公立病院はどんな人にも無料で応対してきました。しかしながら全国で初めて北西部サルタ州では3月から外国人への医療行為を有料にしました。 一カ月経ちオラン市では月3千人受診だったのが60人になり、州全体では90%減になりました。在住外国人や人道的緊急医療はこれに該当しません。受診者数の多さは、隣接国からワクチン予防接種や出産などの医療目当てに到来する人々が後を絶たないことが原因です。 続いて南部パタゴニアのサンタクルス州でも外国人有償化が決定されました。ほかにネウケンやコリエンテス州が続く予定です。