混沌ドラフト“隠れ1位”の熱視線を集める立正大の153キロ右腕黒木
満を持してドラフト上位候補として臨んだ4年春リーグ戦では、負けなしの3連勝。 ところが、好事魔多しとはこのことか。 5月3日青学大1回戦の終盤、一塁ベースカバーの際に打者走者と交錯。激しく転倒したものの、アクシデントを物ともせず完投し4連勝。しかし翌日と翌々日は、ブルペン投球のみで登板は無し。このカードを落とした後に右肩亜脱臼と診断され、4季振りの2部優勝に王手をかけながら、寸前で逃すこととなった。 「実は(転倒した)次の日から急に右肩が上がらず、キャッチボールすらままなりませんでした。でも優勝争いの最中だったので、相手を欺くためにも、痛みを堪えて連日ブルペンには入りました(苦笑)」 なかば"手負いの状態"ながら、その実力が認められた形で、黒木は6月の日米大学野球代表選考合宿に初参加。「前週にブルペン入ったばっかり」という"ぶっつけ本番"での登板だった。 しかし、まだ試合勘が戻ってなかったのか。2回を3連打含む5安打2失点の内容だったが、今秋ドラフト候補かつ大学ジャパンの常連・佐藤拓也(立大)には、得意の縦スラで空を切らすなど計4三振を全て空振りで奪う力投を見せた。 また球速は、投手陣20人中最速タイの152キロ含め大台を7度もマーク。ケガからの回復振りをアピールしたものの、残念ながら、初の大学日本代表には選ばれなかった。 さぞかし悔しかろうと思いきや、 「(3連打されて)レベルの高いシート打撃をやってるようでした(苦笑)。でも、逆にコレで秋のリーグ戦へ万全の調整ができると、直ぐに切り替えられましたね」 芯は負けず嫌いな東都No.1右腕の目標は、パ・リーグ屈指のエース、楽天・則本昂大だ。 「大学選手権で20奪三振(参考記録)したときの映像をYouTubeで見て、初めて『敵わないな』と。生で見たいと思って、高3のときに神宮大会見に行きました。実際目の当たりにして、『こういう投手がプロで活躍するんだろうな』と。自分も、則本投手のようなストレートや横スラを投げてみたいですね」 立正大から直接ドラフト指名された選手は、94年西口文也(元西武)を筆頭に、07年田中慎太朗(元阪神)、10年南昌輝、 13年吉田裕太(ともにロッテ)の計4名(※田中は育成)。前評判通りドラフト1位指名されれば、同校初の快挙だ。 10月20日─── 運命の扉は、間もなく開かれる。 (文責・写真・徳吉刑事/フリーライター)