『光る君へ』雨乞いで力尽きた安倍晴明ゆかりの地・広沢池へ。京都のお盆といえば、8月16日に行われる「五山送り火」と灯籠流し
NHK大河ドラマ『光る君へ』の舞台である平安時代の京都。そのゆかりの地をめぐるガイド本、『THE TALE OF GENJI AND KYOTO 日本語と英語で知る、めぐる紫式部の京都ガイド』(SUMIKO KAJIYAMA著、プレジデント社)の著者が、本には書ききれなかったエピソードや知られざる京都の魅力、『源氏物語』にまつわるあれこれを綴ります。 【写真】絵のように美しい広沢池。暮れゆく空の下、灯籠流しが始まる * * * * * * * ◆『源氏物語』誕生の瞬間が近づいてきた 『光る君へ』第30回は、地味な狩衣を着た道長(柄本佑)が、人目を忍んでまひろ(吉高由里子)を訪ねるというドキドキの場面で「つづく」となりました。 オリンピックの中継で次の放送は8月18日。早く続きが観たいのに、と、“お預け”状態でやきもきしている方も多いのではないでしょうか。 次回はついに、物語執筆の依頼へと話が進みそう……。『源氏物語』誕生の瞬間が近づいてきたようです。 安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の“予言”どおり、『源氏物語』を生み出すまひろが道長を照らす光となるのか――。だとすれば、『光る君へ』というタイトルが示すものは何か。それも気になります。 ドラマが始まる前は、「光る君」は光源氏のことだと単純に考えていました。ストーリーが進むにつれて、「なるほど、道長(そして彼をモデルにした光源氏?)のことかな」と思っていたのですが、ひょっとすると、まひろ自身が「道長にとっての光である」という意味も含まれているのかもしれませんね。 その光は、明るい陽の光ではなく、闇夜を照らす月の光に似たものか……。などと、勝手に考察して楽しんでいます(外れていたらすみません)。 命がけの「雨乞い」で一気に老け込んだ晴明も、そろそろ天命が尽きそうな気配。遺言のごとく、道長に啓示を与えたように思えます。
◆晴明の墓所はどこにある? その安倍晴明ゆかりの地としては、何といっても、上京区にある晴明神社が有名です。 創建は1007年。85歳で晴明が没してから2年後のことで、その偉業を讃え、御霊を鎮めるため、一条天皇の命によって、晴明の屋敷跡に社殿が設けられたのです。 「魔除け」「厄除け」の神社として知られていますが、晴明を主人公とした小説やマンガ『陰陽師』のファンや、羽生結弦さんのファンも(彼の代表的なプログラムが『SEIMEI』だというつながりで)多数お参りに訪れています。 境内には約2000株の桔梗が植えられています。なぜ桔梗かというと、同神社の社紋「晴明桔梗」が桔梗の花をモチーフとしているから。「晴明桔梗」は「五芒星」とも呼ばれ、あらゆる魔除けの呪符(じゅふ/さまざまな災禍を防ぎ、幸運や幸福をもたらすと信じられている物)として陰陽道で用いられてきたそうです。 映画『陰陽師』シリーズなどで、呪術を使うシーンに登場するため、「晴明といえば五芒星」というほどよく知られた印。鳥居の額をはじめ、晴明神社の境内でも、あちこちでこの社紋を見かけます。 では、その晴明のお墓は京都のどこにあるか、ご存じでしょうか。 意外なことに、晴明神社からかなり離れた、嵯峨嵐山にあるのです。 実は、晴明の墓所と伝わる場所(晴明塚)は全国に何ヵ所かあるそうです。なぜかというと、稀代の陰陽師のパワーが悪用されるのを恐れ、本当の墓所がどこなのか、わからないようにしたのだとか。 しかし、これほど年月が経てば、隠す必要もないということなのでしょうか。嵯峨の墓所は、現在、晴明神社の飛び地境内となっており、晴明神社が認めた、いわば“公式の墓所”といえそうです。
【関連記事】
- 『光る君へ』まひろと道長、子を授かった石山寺、まひろがつけていた赤い帯って?いけにえの姫・彰子とイメージが重なる女三の宮。彼女が好んだ「桜かさね」の細長など、平安装束の美にふれる
- 本郷和人『光る君へ』なぜ平安貴族は庶民に向き合わないまま、優雅に暮らすことができたの?その理由は単純に…
- 下重暁子 藤原道長からいじめ抜かれた定子を清少納言は懸命に守ったが…紫式部が日記に<清少納言の悪口>を書き連ねた理由を考える【2024年上半期BEST】
- 高畑充希『光る君へ』定子の演技、平野レミ元気の秘訣、松井久子76歳の再婚から2年【週間人気記事 BEST5】
- 『光る君へ』の明子のモデルは六条御息所?葵の上への恨みで生霊になった御息所。聖地「野宮」で執着を祓い清め人生をリセットか