【深刻】医療関係者が頭を悩ます“薬剤師不足”の問題…現場で一体何が?(静岡)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ)
静岡県内で深刻な問題となっている薬剤師不足。特に病院薬剤師の数が不足していて、医療関係者は頭を悩ませています。現場では、一体何が? (甲賀病院 薬剤師 3年目 萩原 佑哉さん) 「トータルのボリュームが100mlで、投与速度が30分かけてなので200ml/h」 病院や薬局などで薬の調合や服薬の管理などを行う薬剤師。焼津市の甲賀病院には、現在16人の薬剤師が働いています。しかし、医療現場では、今、薬剤師不足が深刻化していて、医療技術部の渡邉学部長は頭を抱えています。 (甲賀病院 医療技術部 渡邉 学 部長) 「本来は常勤でも20人を超えた。数がいないと夜間帯も含めたカバーが難しくなるので、できればもう少し薬剤師を増やしていきたいと思っている」「新卒者に限っては、おととしとその前は1人ずつ採用できた、去年は採用できていない」 静岡県が2023年、県内170の病院を対象に実施した薬剤師確保の実態調査では、回答のあった136の病院のうち、約3分の1が「薬剤師が不足している」と回答し、不足している人数は計127人に上ります。特に深刻なのは病院薬剤師で、2023年、厚労省が発表した薬剤師過不足を示す偏在指標によると、静岡県は0.66で、目標指標の1.0を大幅に下回り、都道府県別で40位となっています。病院薬剤師の不足する理由とは一体何か? (甲賀病院 医療技術部 渡邉 学 部長) 「ドラッグストアなども増えてきて、薬剤師の需要が薬局に偏ったところもある。あとは、病院薬剤師は公務員型の給与体系も多いので、給与格差も出てしまったところがある」 一方、薬局薬剤師の静岡県の偏在指標は、1.01で、都道府県別では16位と、薬局薬剤師が多い県に分類されています。また、県によりますと、2022年時点での県内の薬剤師数は、薬局薬剤師が5272人、病院薬剤師が1551人で、10年前と比較すると薬局薬剤師は、926人増えたのに対し、病院薬剤師は286人の増加にとどまり、薬局薬剤師との差が年々広がっています。 病院薬剤師3年目の萩原佑哉さん。薬局などへの人気が高まる中、病院薬剤師の仕事について、医者や看護師などほかの職種と連携して治療を行う「チーム医療」に魅力があると話します。 (甲賀病院 薬剤師 3年目 萩原 佑哉さん) 「医師や看護師など他の職種と連携しながら、薬剤師として、今、持っている知識を患者さんの治療方針などに還元できる点がすごい魅力を感じて」「自分が介入した患者さんが良くなればその喜びも十分得られる」 甲賀病院では、病院に就職すれば奨学金の返済をサポートする奨学金制度や賃金アップなども実施していて、人材確保に向けた取り組みを積極的に行っているということです。 一方、ここは、県内で103店舗を展開するドラッグストア「杏林堂薬局」。好待遇を理由に、統計上では、薬剤師の数が増えている言われていますが…。 (杏林堂薬局 赤星 博樹 人事部長) 「薬剤師は足りていないという状況が続いています」「やはり静岡県には薬学部が1つしかありませんので、 ほとんどの薬学生は県外にいる」「静岡県から関東圏に、例えば進学してもなかなか戻ってこない。いわゆるUターン就職率が少し低いところが問題となっています」 県内では全体的に薬剤師の数が不足しているうえ、採用活動では、病院や他の薬局にも流れてしまうため、統計とは裏腹に、薬剤師の確保が厳しい状況が続いているということです。 薬剤師2年目の今村仁菜さんは、杏林堂薬局を選んだ理由について、福利厚生や給与面のほか、地域に密着した身近な医療に魅力を感じたといいます。 (杏林堂薬局 薬剤師 2年目 今村 仁菜さん) 「(店には)健康な人も来て、風邪をひいた時のための薬の相談や、サプリメント、健康食品の相談もあるので、全ての人が病気っていうわけではなくて、健康な人も買い物のついでに相談に来られる環境があるのかなとは思う」 杏林堂では、東京に採用拠点を構え、県外の薬学生にアプローチするなど、人材確保に向けた積極的な取り組みを実施していますが、行政や地域の協力が必要だと話していました。 県内の医療現場で深刻化する薬剤師不足。このまま不足が続いた場合、県民に、どのような影響を与えるのでしょうか。県薬事課の中村大輔さんは「医療の質が落ちる」と危機感を募らせます。 (県薬事課 中村 太輔さん) 「薬剤師が減るということになると、まず医療の質の低下ということが一番先に考えられると思います。また病院の薬剤師が減るということは病棟での薬の関係の業務が手薄になるということですので、入院しているときにも患者さんのお薬の管理が難しくなる」 では、今後のどのような対策を講じていくのでしょうか? (県薬事課 中村 太輔さん) 「静岡県は薬学部進学率が全国と比較しても低い方にあります。そのため、高校生の方を対象とした薬学部進学セミナーというものを行う予定です。加えて、小中学生の子どもたちにも薬剤師の仕事を知ってもらうということで、ジョブセミナーというものも予定しております」 全国で問題となっている薬剤師不足を解決していくため、行政をはじめ、地域全体で垣根を超えた取り組みが、早急に求められています。