【毎日書評】「グミ」の大ブレイクからみえてきた!時代の変化とヒットの法則
人口が減少する日本で、なぜグミは成長しているのか
いまさら強調するまでもなく日本では少子高齢化が進んでおり、食品産業もその影響を免れません。2022年の食品の家計消費支出(家計調査=2人以上の世帯)は実質で前年比1.3%減。エネルギーコストの上昇や値上げが続くなかで実質賃金が飲み悩み、生活者の節約思考が強まった結果だといえそうです。 しかし、菓子は実質前年比2.5%増と堅調。菓子業界ではスイーツブームが続いており、年間の消費支出は10年前の7万7779円から2022年は9万4373円と大きく伸びているというのです。 全日本菓子協会によると、2022年の菓子の生産数量は195万888トンで、この20年ほどは190万トン台で横ばい。消費額の増加は、菓子業界による高付加価値化の努力も関係しているのだろうと著者は述べています。(62ページより)
人口減少の影響は免れない
しかし、そうはいっても人口減少の影響を免れることはできないでしょう。国立社会保障・人口問題研究所は、2056年に人口が1億人を下回り、2059年には日本人の出生数が50万人を割るとの予測を2023年4月に公表しています。つまりは菓子業界も、急速な少子高齢化に伴う人口減少の影響を免れることをできそうもないということです。 ちなみに菓子業界においてはガム市場が縮小しているようで、それは人口動態の影響も少なくないといいます。事実、ある菓子メーカーのマーケティング担当者は、「(過去にガムをよく噛んでいた)団塊の世代が大量退職して人と会う機会が減り、口臭対策としての利用が減ったことが大きい」と分析しているのだとか。(63ページより)
ベネフィットが世代間で受け継がれるグミ
では、グミはどうでしょうか? この点については、グミと「団塊ジュニア」との関係性を著者は指摘しています。 団塊の世代の子どもたち「団塊ジュニア」の幼少期の1980年代に登場し、団塊の世代には及ばないものの人口が分厚い層を取り込んだ。 明治の「果汁グミ」の登場で市場が確立され、様々なメーカーが様々な新商品を投入。ジュニア達にとって思春期の「思い出の味」となっていった。 ここまではガムの流れと同じだが、グミは親から子どもへと「おいしさ」などのベネフィット(商品から得られる価値、便益)がうまく伝わった点で、ガムと明暗を分けたのではないだろうか。(64~65ページより) 事実、各種消費者調査のデータにおいて、グミを食べているのは「年代では20~30代、ライフステージでは子育て中といった若い層で多い」ことが明らかになっているといいます。親の世代がグミを子どもに買い与えたり、食べさせたりしている実態が浮かび上がっているということです。 実際、あるグミメーカーの担当者は 「『果汁グミ』が強いのは、子どもが生まれて最初に食べるグミが『果汁グミ』というところ。調査でも、お母さんが最初に買い与えるグミが『果汁グミ』だというのが非常に多い。その子どもが大人になっても、そのまま『果汁グミ』を食べ続ける。つまりロイヤルユーザーになっていく流れがある」と話す。(65ページより) そう考えると、「コーラアップ」や「果汁グミ」「ピュレグミ」など、グミにロングセラーが多いことにも納得がいくわけです。(63ページより)