「自社のバイクを売らないバイクビジネス」をインド市場に仕掛けるヤマハのねらいとは
フェーバイクが取り扱う車両の多くは、最高速度が25km/h以下のEVスクーターだ。いわゆる日本の原付一種に近いカテゴリーだが、インドでは25km/h以下に制限された車両は免許不要で乗ることができる。免許の取得や、自らバイクを購入せずともここでEVスクーターをレンタルすることで「お金を稼ぐ」手段を手にいれることができるのだ。
22歳のマリックさんは、西ベンガル州のコルカタという街(インドの東端)からバンガロールに出てきた。4か月ほど前からフェーバイクを利用し、フードデリバリーをおこなっている。以前は工事関係の仕事をしていたが、月収は2万ルピー(約3万6000円)ほどだった。フードデリバリーに鞍替えしてからは月収3万ルピー(約5万3000円)~3万5000ルピー(約6万2000円)ほどを稼ぐようになったという。レンタル代の1300ルピー(約2300円)/週を差し引いても「稼げるようになった」。
実は自身でもホンダの内燃機関のバイクを所有しているが、仕事で使うなら小回りが効いて燃料代が掛からない(安く済む)EVが良いという。ちなみにマリックさんが使っているEVスクーターの航続距離は30km程度だそうだが、夜間に充電しておけば1日のデリバリーをまかなうには十分だそうだ。毎日11時~23時まで休みなく、1日あたり30件ほどを回るのだとか。
「将来のことはあまり考えていないけど、自分の家を持つのが夢なんです」と話すマリックさんは、コルカタの両親に毎月2万ルピーを仕送りしながら今日を生きている。
◆モビリティへのハードルを低くする
MBSIの中尾氏は、この新しいモビリティビジネスの目的を「QOLの改善を、イージー・アクセス・トゥ・モビリティで実現すること」と語る。
「一番の価値はモビリティへのハードルを低くすること。これを実現することでQOLが上がるという形をつくる。これをコアにした長期ビジョンがあれば、2030年といわず、もっと先まで戦い続けていける」