「自社のバイクを売らないバイクビジネス」をインド市場に仕掛けるヤマハのねらいとは
◆ヤマハ車はわずか5%、他メーカー車両も提供
取り扱う車両はインドで販売されるあらゆるメーカーの車両で、内燃機関の2輪、2輪のEVを中心に、3輪のEV、そして4輪のEVと内燃機関車も揃える。サービス事業者の要望に応じて、例えばライバル企業でもあるホンダやスズキの車両も提供することができる。ヤマハ製品の比率は「マーケットシェアとほぼ同じくらい」(中尾氏)でおよそ5%程度だという。
ガソリン代が高い(日本とほぼ同じで、レギュラーガソリン1リットルあたり約160円)ため車両価格も安価なEVの需要が高いが、品質に難がある車両も多い。それについてはモビリティ企業であるヤマハの知見を生かし現地での「目利き」を育てながら、最適な車両導入をおこなっているという。
また、納入した車両のメンテナンスにも力を入れる。社員約60名のうち4割がメンテナンスを担当しており、車両がちゃんと動いているか、事故なく運用できているかなどを常にチェックしながら運営にあたっている。車両にはすべて、後付けできるIoTデバイスを取り付け、使用状況や車両の状態をウォッチし、事業者へのアドバイスもおこなう。
そこが「お金だけを提供するファイナンス会社や単なるリース会社との大きな違い」(中尾氏)で、事業者=パートナーの成功や成長があってこそ、MBSIのビジネスも成り立つという考え方だ。そうして実績を積み重ね、現在は31社に車両を提供。保有台数は約1万台にものぼる。
◆アフターサービスが利用の決め手に
今回の取材では、バンガロール市内で実際にMBSIが2輪のEVを提供する事業者「FAEBIKES(フェーバイク)」を訪れ、話を聞くことができた。同社は2016年に設立、一般ユーザーやフードデリバリーに対しバイクのレンタルをおこなっており、2拠点で約1600台もの車両を取り扱っているという。
MBSIをパートナーに選んだ理由として同社は、「車両のアフターサービス」が大きいと説明する。ユーザーは生活をするための仕事としてバイクを使っている。車両をトラブルなく、長く使えることがユーザーにとっての最大のバリューだと考えており、そうした考え方がMBSIと一致したことが契約につながったとしている。