日軽金とヤマシナが「高強度アルミボルト」開発。モビリティ分野で採用目指す
日本軽金属は11日、工業用ファスナー大手のヤマシナ(京都市)と共同で高強度アルミボルトを開発し、ボルト素材と製造方法について5月29日付で特許を取得したと発表した。日軽金が開発した強度と耐応力腐食割れ性(耐SCC性)、耐熱性を両立した6000系合金を利用し、アルミボルトの製造ノウハウを持つヤマシナが販売に乗り出す。軽量化に向けてアルミ部材の採用が広がる自動車などモビリティ分野での採用拡大を目指す。 鉄やステンレスが主流のボルトだが、自動車の軽量化に伴うアルミ化の流れなどを受けてアルミボルトを活用する事例が欧州を中心に拡大している。アルミボルトのうち6000系合金と7000系合金の比較では、強度では7000系合金が勝るものの、耐SCC性と耐熱性では6000系が優れる傾向がある。自動車向けでアルミボルトが普及している欧州では、主に6056合金が利用されている。 日軽金グループでは送電線向けが中心のアルミ線材の新規需要開拓に向けて、ボルト市場に着目した。それまで取引関係になかったが、アルミボルトの製造ノウハウが豊富なヤマシナと2020年から共同研究を始め、今年5月には「アルミニウム合金製ねじ用素材及びアルミニウム合金製ねじ並びにその製造方法」で特許を取得した。 日軽金は今回、強度と耐腐食を兼ね備えた6000系オリジナル合金「HS6Y」を開発した。新合金は引張強度460メガパスカル以上、0・2%耐力380メガパスカル以上、破断伸び10%以上で、引っ張り強さは6056合金を1割上回っている。 アルミボルトは伸線工程まで日軽金グループで対応し、ボルト製造と販売はヤマシナが担当する。今後は年内をめどにユーザーへサンプル出荷を開始し、来年以降の量産化を目指す。「自動車用アルミ部材に鉄系ボルトではなくアルミボルトを利用することで、電蝕リスクが低減できるほかリサイクルする際に分別が不要になるメリットがある。横振動にも強いというデータもある」(日軽金)とし、自動車やドローンなどモビリティ分野での採用拡大を図る。 また「バスバーの締結部にも利用できるので、半導体製造装置分野で利用される可能性もある」(同)としている。