岐阜県警察本部

　岐阜県大垣市で計画された風力発電施設の建設を巡り、県警大垣署が住民の個人情報を収集し、業者に提供したのは違法と認めた名古屋高裁判決を受け、岐阜県は2日、上告しないと発表した。控訴審判決で示された情報の抹消はすでに行ったという。原告の住民側は期限の9月27日に上告しないと発表していた。2日が県の上告期限のため、控訴審判決が確定する見通し。 【写真】上告しないと表明した左から原告の近藤ゆり子さん、弁護団の山田秀樹団長、小林明人事務局長=2024年9月27日、岐阜県大垣市、伊藤智章撮影 　控訴審判決によると、同署は2013～14年、風力発電について勉強会を開くなどしていた住民4人の個人情報を収集し、建設を計画していた中部電力子会社「シーテック」に病歴や市民運動への関与などを提供した。 　名古屋高裁は、「恣意（しい）的な運用がされていた」などとして県警の情報提供に加え、収集や保有も違法とし、住民4人に請求通りの計440万円の損害賠償や、県の保有が認められる情報について抹消を命じた。 　岐阜県警は、上告しない理由について、上告審で主張を十分に立証することは困難と判断したとし、「引き続き、法令に基づき、不偏不党かつ公平中立に職務に邁進（まいしん）する」とコメントした。 　県の上告断念を受け、原告側は声明を発表。「公安警察の活動のどこに問題があったのか、原因はどこにあったのか、警察庁と政府が問い直して公表し、警察の民主化のための法的統制の議論をすべきだ」などと訴えた。情報の抹消については、警察庁と県警に協議を申し入れるとしている。 　元警察大学校長の田村正博・京都産業大教授（警察行政法）は「一般的にはローンオフェンダー（単独の攻撃者）を見落とさないためにも、情報収集は必要。今回は厳格な管理をしなければ社会的に非難される、と突きつけられた。国民に必要性を理解してもらい、信頼を持ってもらうことが大切だ。情報収集・保管の内部基準の設定や、公安委員会など第三者機関がより厳格に管理するなど、行政上の統制が一層求められる」と指摘した。（渡辺杏果、連勝一郎）