「小澤征爾さんのOMFへの思い受け継ぐ」 SKOコンマスの矢部達哉さん手応え
長野県松本市で開かれている国際音楽祭セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)は、主要公演を終えて最終盤を迎えた。総監督・小澤征爾さんが亡くなり、新たな船出となった今年の音楽祭。小澤さんとともに歴史を刻んできたサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)のメンバーは、どのような手応えを得て、未来へどうつなげようとしているのか。初期から参加するバイオリン奏者で、コンサートマスターの一人、矢部達哉さん(56)に聞いた。 始まる前は、これまで小澤さんに依存してきたものを自分たちで背負う覚悟に緊張していたものの、松本では小澤さんに守られている感覚があったという。首席客演指揮者に就いた沖澤のどかさんとの公演は、特に急きょ代役で指揮したプログラムで小澤さんの黄金期と同じような胸の高鳴りを味わったといい「(指揮者交代の)この試練も小澤さんが与えてくれたのかもしれない」と振り返る。 小澤さん亡き後のOMFの行方が注目される中、「他に世界のどこにあるんだ、というレベルの演奏を届けられ、来年以降も目に見えない核みたいなものを継承していく自信を得られた」と安堵する。 音楽祭が形だけ続くことには意味がないとし、ベテラン勢が懸命に取り組む背中を見せることで、120%の力を出し切る姿勢を継承する。「それは小澤さんが残したもの。一番大事な精神をきちんと引き継ぎ、自分たちでそしゃくし発展させていかなければ」と力を込める。 今年は5年ぶりのそばパーティーで市民ボランティアと交流できたことを喜ぶ。松本での開催には、市民と歩んでいくという小澤さんの思いがあったとし「いま一度原点を考え、市民の皆さんとも、あらためて日本最高の音楽祭を発展させていこうという気持ちでまとまれたら」と願っている。