アングル:中国メーカーが欧州向けハイブリッド車輸出拡大、EV関税回避狙う
[上海 5日 ロイター] - 中国自動車メーカーは欧州向けのハイブリッド車輸出を拡大しつつあり、今後より多くの車種を投入する計画だ。欧州連合(EU)が発動した中国製電気自動車(EV)に対する高関税による影響を、最小限にとどめる狙いがある。 EUの輸入関税対象にハイブリッド車は含まれず、BYD(比亜迪)といった中国メーカーはこのハイブリッド車を通じて欧州市場での事業拡張路線を維持できる、と複数のアナリストが解説した。 カウンターポイント・リサーチのアナリスト、ムルトゥサ・アリ氏は、EUが中国から輸入されるEVに課す関税を回避する手段として、中国のOEM(相手先ブランドによる生産)がプラグインハイブリッド車(PHEV)にシフトしていることが輸出の伸びをけん引していると指摘。中国の欧州向けハイブリッド車輸出は今年が20%、来年はもっと増えると予想している。 最大45.3%の税率が適用されるEUの中国製EV関税は10月終盤に発効した。ただEUの反補助金調査は昨年10月に始まっており、一部の中国メーカーは国内の景気減速に伴う販売鈍化という事情も踏まえ、既に欧州戦略をハイブリッド車輸出に転換していることがデータから分かる。 通常のエンジン車と完全電動車の中間的性格を持つハイブリッド車は、価格の手頃さから消費者の間で人気が高まってきている。 中国乗用車協会(CPCA)によると、7―9月の欧州向けハイブリッド車輸出は6万5800台と前年同期の3倍以上に増加し、昨年から今年それまでにかけての販売減少の流れが逆転しつつある。 7―9月に中国から欧州に輸出された全自動車のうちPHEVと従来のハイブリッド車の比率は18%と1―3月の9%から2倍に上昇。対照的にこの間のEVの比率は62%から58%に低下した。 こうした傾向はさらに強まりそうだ。 複数のアナリストは、昨年日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった中国は、国内の過剰供給問題を解消するため輸出攻勢をかけている、と話す。 米国とカナダが中国製EVに100%の関税を課している状況にあって、欧州は中国メーカーにとって最も明確な販路にもなっている。 <PHEV市場の構図塗り替えも> 大手中国メーカーは、物価高の下で燃費性能が高く価格が手頃な車の需要が高まっている市場に対応する形で、今のところ地元勢と日本勢が牛耳る欧州のPHEV市場の構図を覆す可能性がある。 BYDは欧州向け初のPHEVとなる「シールU DM-i」を投入し、独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車に対抗する構え。 シールU DM-iは3万5900ユーロ(3万7700ドル)からと、VWで最も売れ筋のPHEV「ティグアン」の価格を下回り、トヨタの「C-HR」より10%安い。 中国メディアの報道では、BYDはハンガリーの工場でEVとハイブリッド車を生産することも検討中だ。 オートモーティブ・フォーサイトのマネジングディレクター、イェール・チャン氏は「ハイブリッド車の分野は中国メーカーにとってより大きな成長機会をもたらしてもおかしくない。欧州により多くの手頃な価格の選択肢を提供し、価格に敏感な消費者を引きつける」と述べた。 販売台数で中国2位のメーカー、吉利汽車は先月、欧州向けブランド「リンク&コー」の下で新たなPHEVを投入。ロイターの質問に対して通商規制には言及しなかったが「最近世界中の市場で自動車メーカーがハイブリッド車のモデルの投入を増やしていることは、消費者の需要や購入傾向と整合性がある」とコメントした。 今年の欧州におけるハイブリッド車の需要拡大は、中国での過剰生産に悩む日本メーカーにとっても追い風だ。 中国の1―9月販売が29%落ち込んだホンダは、中国から欧州に従来のハイブリッド車2種類とPHEV1種類を輸出している。 中国から欧州へのハイブリッド車輸出増加は、欧州市場での価格競争を激化させかねないが、複数の専門家は中国メーカーがEUの追加的な関税発動を警戒してより慎重に振る舞う公算が大きいと予想する。 チャン氏はBYDのハイブリッドセダン「キンプラス」に言及して「欧州向け価格が2万ユーロに設定されれば、新たな激震が走るのは間違いない」と述べた。 *システムの都合で再送します