ヒズボラ最高指導者の殺害、イスラエルにとって成果 組織壊滅につながるかは時期尚早
何がテロ組織を無力化するのか
テロ組織を機能不全へと追いやることができるのは、できるだけ多くの指導者や幹部を排除するための継続的な軍事作戦だ。米シンクタンク「ニューアメリカ」によれば、米中央情報局(CIA)は08年にアフガニスタンと国境を接するパキスタンの部族地域でドローン(無人機)による作戦を強化し、アルカイダの指導者の多くを殺害した(筆者は同シンクタンクの副所長を務めている)。 海軍特殊部隊(SEAL)が11年にアルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者をパキスタン・アボタバードの屋敷で殺害した際に回収した書類によれば、ビンラディン容疑者は定期的に、部族地域内に住む信奉者に手紙を送り、ドローンの効果が弱まる曇りの日だけ移動するよう促していた。その結果、ビンラディン容疑者は信奉者全員を部族地域から移動させ、他の地域に再定住させる計画を立てていた。 ビンラディン容疑者の死は、テロリストに対するアルカイダの魅力や、その攻撃実行能力を弱めることに確かに大きく貢献した。だが、それは、アルカイダを創設し、最も危険な作戦を指揮したのがビンラディン容疑者であり、アルカイダのメンバーがビンラディン容疑者に個人的に忠誠を誓っていたためだ。 ビンラディン容疑者の後継者であるアイマン・ザワヒリ容疑者には、アルカイダを復活させるためのカリスマや組織力はなかった。ザワヒリ容疑者自身、2年前にアフガニスタンで、米軍のドローンによる攻撃で死亡した。国連の推計によれば、現在アフガニスタンに住んでいるアルカイダのメンバーは約400人。 アルカイダは比較的小規模なテロ組織だが、ヒズボラは40年前から存在しており、イランの支援を受けている。ヒズボラは中東地域の主要な勢力であり、兵士の数は約3万人。約15万発のロケット弾やミサイルを含むさまざまな兵器を保有している。 ナスララ師の殺害はイスラエルにとって大きな成果だ。イスラエルは大規模な攻撃の一環として、今月に入り秘密作戦で数千台のポケットベルやトランシーバーを爆発させ、その後、大規模な空爆によって、インフラを破壊し、ヒズボラの幹部を排除した。 しかし、ヒズボラを壊滅させたのかどうかについては時期尚早だ。明らかに、ヒズボラが混乱状態に陥っているとはいえ。歴史が示唆しているのは、ヒズボラはイスラエルとの長きにわたる戦いを継続するために、組織を再編して、他の指導者を任命するだろうということだ。 ◇ 本稿はCNNのピーター・バーゲン記者の分析記事です。