英誌が警告、「ハイブリッド車」ブームに満足している自動車メーカーは負ける
欧米ではEVの販売が低迷する一方、ハイブリッド車の売れ行きが好調だ。各メーカーともEVに専念するのをやめ、ハイブリッド車を作る戦略に切り替えている。しかし、そのブームは一時的なものに過ぎないと、英誌「エコノミスト」が警鐘を鳴らす。 【画像で見る】ハイブリッド車の販売はすぐにピークアウトする!
高まるハイブリッド車人気
自動車業界はいま、ガソリン車から、バッテリーで稼働する電気自動車(EV)への転換を通じてCO2の排出をなくそうとしている。しかし、そのどちらも欲しがる消費者が増えつつあり、プラグインハイブリッド車(PHEV)の売り上げが爆発的に伸びている。 PHEVはEVの価格が高すぎる、あるいは充電スタンドの配備が不充分だと考える消費者に人気だ。2023年、バッテリー式電気自動車(BEV)の世界的な売り上げは、PHEVに対して2倍だったが、その差は急激に縮まってきている。投資調査会社バーンスタインによると、2024年上半期、PHEVの売り上げは前年同期比で50%増えたのに対し、BEVの伸びは前年比プラス8%にとどまった。 そんななか、多くの自動車メーカーはBEV製造のペースを落とし、ハイブリッド車の製造に力を入れている。スウェーデンのボルボは9月、2030年までに新車をすべてEVにするという目標を撤回した。同社は2030年までに世界販売台数の90~100%をBEVとPHEVにすることを目指す。 8月、米フォードは大型の電気SUVを製造するプランを中止し、ハイブリッド車に変更すると公表した。韓国の現代自動車(ヒョンデ)は、ハイブリッド車を7車種から14車種に増やす計画を明らかにした。独フォルクスワーゲンもBEVのプランを見直し、ハイブリッド車への投資を増やすと発表している。
安価で高性能という魅力
消費者がハイブリッド車を選ぶ理由の1つは、その価格の安さだ。BEVは走行に必要な大容量バッテリーの費用が高いため、ガソリン車よりもはるかに高価になる。この点こそが、EVを大量に販売しようとする際に問題になる。フォードCEOのジム・ファーリーは、ほとんどの消費者は「さらに高い品質を求めるためにお金を余分に払おうとはしない」と指摘している。 一方、PHEVは小さなバッテリーで駆動し、消費電力も1時間当たり20キロワットと、BEVの約3分の1で済む。稼働に必要な電力が少ないため、走行にかかるコストはガソリン車よりも安い。一方、PHEVの価格はガソリン車よりは高いが、EVよりは安い。1回の充電で走れるのは85キロメートルほどまでだが、代わりにガソリンでも駆動するので、BEVのように充電切れで走れなくなるという心配もない。 自動車メーカーがハイブリッド車を好むのは、ガソリン車と同様、利益を生みやすいからだ。小さなバッテリーの製造コストは安い。大手の老舗メーカーが長年信頼してきた自社の専門家たちやサプライチェーンに頼りやすいところも、ハイブリッド車のメリットだ。