スマホの【衛星通信】最新事情。国内4キャリアも続々と新技術を導入中!
――スターリンク、圧倒的じゃないですか! これに対抗するのは、どのようなITや通信企業があるのですか? 法林 まずアマゾンには、子会社である宇宙開発企業Project Kuiper(以下、プロジェクトカイパー)があります。同社もスターリンクと同じように低軌道衛星を利用しており、昨年の10月にはその打ち上げに成功。今後6年間で3200基の低軌道衛星を打ち上げる予定となっています。 国内では昨年11月に、NTT、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、スカパーJSATと協業していくことが発表されました。 ――この協業により、日本では通信衛星がどんな活用を? 法林 プロジェクトカイパーはスターリンクと同じようにアンテナ端末があれば衛星からの電波を受信できます。そして、スターリンクが実測で下り100Mbps前後の速度に対し、プロジェクトカイパーは100Gbpsと高速。このような技術を生かし、山間部や島嶼部など日本ならではの通信環境を整えるのがNTTドコモの考える利用目的です。 また、こういった地域での建設機械の遠隔操作などにも活用でき、アマゾンのクラウドサービスであるAWSと連携してAIを用いた運用ができるのも特徴です。もちろん、能登半島地震のような災害用としても申し分ないでしょう。 ――KDDIは能登半島地震でスペースXのスターリンクを積極的に提供していましたよね。 法林 はい。KDDIは能登半島地震前からスターリンクを基地局や無線Wi-Fiスポットとして活用を進めており、国内では最も衛星通信に長たけたキャリアでしょう。スペースXは今年1月3日に次世代の衛星の打ち上げに成功し、これにより今後は、スマホと衛星との直接通信が可能になります。 ――直接通信とは、どういったシステムなのですか? 法林 これまでのスターリンクは衛星からの電波を、地上のスターリンク端末と連携して基地局、無線Wi-Fiスポットに変換していました。次世代衛星ではスターリンク端末は必要なく、市販のスマホと衛星による直接通信が行なえ、SMSの発信などが可能となります。 これに近いシステムとしては、Appleが22年発売のiPhone 14シリーズから実装する「衛星経由の緊急SOS」機能があります。ただし、北米とヨーロッパ、オセアニアの一部のみ対応で、日本では実装の時期すら発表されていません。 一方、スペースXとKDDIは24年度の早い時期に、衛星とスマホの直接通信をユーザーに提供することを発表済みです。 将来的にはスマホのデータ通信・通話も可能にする計画で、現在は各社共にスマホと衛星の直接通信が技術開発の中心になっています。