スマホの【衛星通信】最新事情。国内4キャリアも続々と新技術を導入中!
■ソフバン、楽天もすごい技術あります! ――では、ここからはソフトバンクや楽天モバイルの衛星通信事情もチェックしてみましょう。 法林 ソフトバンクが力を入れているのはHAPS(High Altitude Platform Station)技術です。高度20㎞前後の成層圏を飛行する無人航空機に基地局システムを搭載し、地上半径100㎞のエリアをカバーするという技術です。 同社の子会社が開発した機体は翼長78mという超巨大な航空機で、これを数ヵ月間も成層圏に滞在させ、電波を発信し続けます。HAPSに関してはNTTドコモも研究していますが、すでに飛行・通信実験にも成功しているソフトバンクが先行しています。 ――これ、本気ですごいやつじゃないですか! 法林 日本で運用するとなると、あまりにも巨大な航空機のため、滑走路などの運用施設の確保が問題になってくるでしょう。なので、アフリカやアメリカなど広大な土地のある地域での運用試験が繰り返されています。 その一方、ソフトバンクはイギリスの宇宙開発企業OneWebとも提携し、衛星通信網の構築にも取り組んでいます。OneWebはスペースXと同様のサービスを行なっており、現在600基以上の低軌道衛星を運用しています。 ――楽天モバイルの技術は? 法林 楽天モバイルはキャリアとして正式サービスを開始した20年に、アメリカの宇宙開発スタートアップ企業のAST SpaceMobile(以下、AST)と提携し、同社の低軌道衛星BlueWalker 3で実験を行なっています。 すでに市販のスマホと衛星との「データ通信・音声通話」両方の直接通信に成功しており、実は世界初の快挙となります。 ASTは規模的にはまだ小さいですが、Googleや各国の通信大手が続々と投資と技術支援をしており、今後の期待は大きいです。 ――では、キャリアが衛星通信に力を入れる理由とは? 法林 全ユーザーが衛星を利用した直接通信を常時接続するのは、設備やコスト面で難しいでしょう。ただ、災害時に衛星通信を無料開放することのメリットが大きい。被災地に無料開放することで、救助・救命作業はより効率化します。それもあってキャリアは衛星通信の技術開発、その実用化を急いでいるのです。 ――より災害に強い通信インフラが誕生するなら、これは大歓迎です! 写真/AST SpaceMobile Project Kuiper SpaceX KDDI ソフトバンク AFP/アフロ ロイター/アフロ 法林岳之 取材・文/直井裕太