ひたすらネガティブな独り言をつぶやく「ハムレット」 主人公がほぼ“ツイ廃”なのに名作になった理由
今年、生誕460年を迎えたウィリアム・シェイクスピア。約400年前の劇作家でありながら、その作品は、現代のビジネスで成功するために必要な要素がつまっていたり、今で言う「ツイ廃」のような主人公が登場するなど、先駆的な内容です。 本稿では、蜷川幸雄のもとで演出を学び、シェイクスピア劇を現代にアップデートする演出家・木村龍之介氏が、シェイクスピアならではの「パクリ術」について紹介します(『14歳のためのシェイクスピア』より一部編集して抜粋)。
■シェイクスピアはパクリの名人!? この世の物語のパターンは、すべてシェイクスピアが編み出した、と言われることがあります。こう聞くと、シェイクスピアが全部の作品を0から1でつくり出したように聞こえるかもしれませんが、実は全然違います。 シェイクスピアは、パクリの名人なんです。パクリというと聞こえが悪いですが、さまざまな過去の作品から、ストーリーをたくさん盗んでいるのです。 今、小説でもイラストでも、パクリがばれたら大炎上します。これ、どこから持ってきたんだとか、お前の力じゃないだろと詰められたりしますよね。
シェイクスピアがやり玉にあがったら、年がら年じゅう炎上しているかもしれません。なぜかというと、有名作品から一般的に知られていない作品まで、ストーリーはほとんどすべて、それ以前の作品のものをシレッと使っているからです。あっちこっちの作品からいいところをつまみ食いして、合わせ技をする名人でもありました。 ただ、ここが大事なところなのですが、先行作品から盗み取って、そこに一滴のシェイクスピア・エッセンスを加えています。あるいは、この作品とこの話を組み合わせようという卓越したアイディアがある。
このことによって、単なるその時代のヒット作だった作品が、400年以上残る人類史上の大ヒットに変わった。これがシェイクスピアの天才たるゆえんなんです。 では、シェイクスピアはもとの作品をどのように変えたのでしょうか。これにはいくつかのパターンがあります。まずは、人間の誰しも共通するテーマを1つ入れるというものです。 ■あの「オセロー」にも“原作”があった 例えば『オセロー』という作品は、嫉妬の話として非常に有名です。